【趣の庭】釣り三昧
2008.4.21
Vol.15 両親が有料老人ホームに入居した 寂しさが募る
樋口 正博
 
2kg、3kgの良型マダイがたくさん釣れた 特大のグリルでこんがりと焼き上がる2kgのマダイの開き

2kg、3kgの良型マダイが
たくさん釣れた

特大のグリルでこんがりと焼き上がる2kgのマダイの開き
 

 4月8日、とうとう両親が有料老人ホームに入った。父84歳、母80歳。この3年間、長男夫婦のわれわれと長女、次男の兄弟が入れ替わり立ち替わりで帰郷しては、両親の介護を続けた。
 だが、トイレも歩行も自立できなくなった現在、妻や姉貴の負担も増大して、有料老人ホーム入りを決めたのだ。
 幸い、自宅の近くの病院が有料老人ホームを新規オープンさせたので、そこにお世話になることにした。だが、入居費用がかなり高額で、2人で月額50万円を超える。それでも、年金と多少の貯蓄があるのでなんとかなりそうだ。両親の貯蓄は彼らの生活のために、全部使ってもいいと兄弟と妻とで話し合った。
 親父は半年前から歩行が難しくなった。身体の筋肉が衰えて、ベッドに入るのにも介護が必要になった。だが、頭はしっかりしていて、自分から「もう自宅じゃ無理だ。老人ホームに入るわ」と言い出したのだ。それからは、身辺を整理するように、いろいろと片づけをわれわれに言い出していた。
 まだらぼけの母には、老人ホームのことは説明しているのだが、いまいちどういうことか理解していなかった。で、8日になってホームの部屋に入ったところで混乱し始めた。とたんに機嫌が悪くなって、ブスっとしてしまった。
両親が入居する有料老人ホームの部屋
両親が入居する有料老人ホームの部屋
夫婦入居はかなり珍しいという
 
 ともかく、われわれはちょっとホッとしているのだが、一方で後悔もしている。両親が一番いたい自宅にいさせることができなかった。一日中、お気に入りのソファーと椅子に座ったままで、ほとんどなにもしていなかったのだが、やっぱりわが家にいる安心感はあったはずなのだ。
 いままでは、兄弟と妻のだれかが実家に寝泊まりして両親の面倒をみてきた。それが週末に老人ホームに行くスケジュールになる。つまり、実家はほとんどが不在状態になる。タコの介は、挨拶状に自分の携帯電話の番号を書いて、隣組を回って不在気味になることを知らせた。親父も月に何回かは自宅に帰りたいと言っているのでそうするつもりだ。
 
上越の「さとみ丸」で嵐山さんと篠原船長とでタイタニックごっこ

上越の「さとみ丸」で嵐山さんと
篠原船長とでタイタニックごっこ
 
 さて、釣りの話だ。4月1日と2日は、嵐山光三郎さんと、新潟は上越の海でマダイ釣りをしてきた。上越は日本でも有数のマダイ釣り場だ。しかも、船でのマダイ釣りを本格的に始めて間もないので、魚影がすこぶる濃い。
 東京湾や相模湾もよく知られたマダイ釣り場だが、1日釣って3枚も釣れれば「大漁」といっていい。だが、上越はというと、一人で10枚以上はザラ。船中10人乗っていたら、150枚というとんでもない数のマダイが釣れる。
 3月から5月上旬にかけての上越沖は、乗っ込み前のマダイが釣れて、しかも2kg、3kgという型のいいのが釣れる。この時期のマダイは味も抜群だ。

 嵐山さんが上越沖でマダイ釣りをするのは今回で3回目。前回は強風のために出船できずに、前日に釣っておいたマダイを船上で開いて干した。「釣って開いて」というのが、「つり丸」での嵐山さんの連載タイトルだが、このときばかりは「釣らずに開いて」というタイトルにしてしのいだのだ。
 毎年、この時期になると嵐山さんから「上越はまだか」「新潟のマダイは釣れはじめたか」という催促の電話が頻繁に掛かってくる。タコの介は釣況を船宿の船長に問い合わせて、出撃のタイミングを測っていたのだ。

 で、マダイ釣りの結果だが、嵐山さんもタコの介も6、7枚のマダイを釣った。型も最大で3・5kgと上々。ピンク色の美しいマダイだ。嵐山さんは思わず「結婚してください」とプロポーズしそうになったほどの美形だった。
 もちろん、2kgクラスのマダイを2枚選んで、船上で開いて干した。贅沢の極みであるマダイの干物を作った。上越の青空にマダイの開きが翻った。潮風が旨味を凝縮させる。

4月1日、嵐山邸の見事な桜が満開になった

4月1日、嵐山邸の見事な桜が満開になった
 
 船を降りたときにはもうマダイの開きが出来上がっていた。さっそく料理屋に持ち込んで、特大のグリルで焼いた。
 タコの介と嵐山さんがほうばる。「……!」言葉にならない。かぐわしいマダイの香りがほのかに漂う。目玉周りのゼラチンも、頬の肉も絶品である。
 マダイの刺身はほとんどの人が食べていると思うが、マダイの干物を食べた人はそう多くはないだろう。もちろん、店などには売っていない。釣り人が自ら釣って、開いて干して焼く。この手間をかけた末に味わえる逸品なのだ。うまいよー。
 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。
 
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