【趣の庭】釣り三昧
2008.04.07
バカたちが繰り広げる 寒風、海辺のキャンプ
樋口 正博
 
さあ、焚き火だ。祭りだ!

さあ、焚き火だ。祭りだッ!
 

 また、キャンプの日がやってきた。いまは春真っ盛りだけど、つい1か月前までは冬そのものだった。毎月「つり丸」で1回やっている椎名誠の「わしらは怪しい雑魚釣り隊」のキャンプ取材。
 2月は三浦半島の京急の終点、三崎口駅近くの矢作の磯でキャンプをした。ただの海岸である。
 神奈川県はエライ。大抵の海岸べりでキャンプや焚き火がOKなのだ。ウルさいのは千葉県と茨城県。ほとんどの海岸がキャンプ禁止である。焚き火なんてもってのほかだ。いい海岸線がずらりとあるのに、「キャン禁」だらけ。それでも強行しているキャンパーはいるのだが、なにしろ釣り雑誌とはいえメディアである。写真ものる。ダメだという場所でキャンプはできないのだ。

青空の下の椎名隊長との麻雀 これも重要な仕事なのです

青空の下の椎名隊長との麻雀
これも重要な仕事なのです
 

 で、矢作の磯。われわれは個人用のテントをあちこちに張って、中央部分に食事兼酒飲み場のタープを張る。タコの介はどういうわけか料理長にされて、立川のお米屋さん「市川商店」から借りてきた、2連のコンロ2基と5kgのガスボンベを並べて臨戦態勢を整える。
 隊員のバカたちは、「ハラ減った。ビールはまだか」と勝手に騒いでいる。椎名隊長は、ニコニコしながらそれを眺めてはビールを飲む。

 
「雑魚釣り隊」に戦慄が走った ドレイの反乱が起きるぞッ
ドレイとたき火

ドレイ(右)は焚き火番
火を絶やしたら隊長の雷が落ちるぞ
 
 このキャンプに掟があるとしたら、女人禁制。そして年長序列。さらに伝統のドレイ制度。ドレイは隊員の無謀な要求でも唯々諾々と従うこと。反抗してはいけない。
 そのドレイも数人いて、ドレイ階級のなかにも序列がある。これは年長序列ではなく、ドレイになった順番で位が決まっていく。ドレイ頭というものがある。最近ではドレイ志願者が急増して、われわれ管理職隊員としては作業が楽になった。
 ただ、とっても恐ろしいことが過去にあった。隊員が仕事の都合がつかずに、ドレイより数が少ないことがあった。つまりドレイの数が隊員を上回ったのだ。

 「おい、これはまずいぞ。ドレイたちがドレイ解放で反乱を起こしたら、俺たちはイッパツで終わりじゃないか」

 と、椎名隊長が極めて明快な事実を指摘したのだ。以来、むやみにドレイは増やさない。反乱の目があったら早いうちにつみ取る、というのが「雑魚釣り隊」の鉄則になったのだ。

 しかし、やることは決まっている。キャンプといっても、ただ男たちが集まりテントを張って、あとは飯を食らって酒を飲んでるだけ。
 それじゃ、釣り雑誌の取材にならないので、「じゃ、ちょっとやっつけるか」という椎名隊長の一声で、「よっこらしょ」と腰を上げて防波堤までズラズラと移動しては、「やっ〜!」「とりゃ〜!」「どうだぁ!」と、わけの分からないうなり声をあげて、竿を振り回すのだ。
 だれも何が釣れるのか分からない。というか、そこに魚がいるかどうかも分からない。そういうアバウトなことを真剣にやる。それが「雑魚釣り隊」の真実なのである。

タコの介料理長特製の三浦ダイコンの絶品煮物

タコの介料理長特製の
三浦ダイコンの絶品煮物
 
 そのキャンプでは料理長のタコの介は、地元産の三浦ダイコンをふんだんに使った大根と鶏肉の煮物を大鍋いっぱいに作った。タコの介の得意料理である。ちくわとかはんぺん、薩摩揚げなどもふんだんに入れたので、バカ隊員たちは「うっまー。このおでん」とぬかした。「大根の煮物だっつーの」と、タコの介はその度にイエローカードを出した。
 その夜は盛大な焚き火をして、バカたちはその火の周りを裸になって踊り狂った。伴奏は鍋釜を叩く音だ。
 翌日、宴のあとのカップのなかの水は凍っていた。夜寒くて目が覚め、星空の海岸で小便をして、ブルッと身体を震わせ、ホカロンを身体中にベタベタと張って寝袋に潜ったのを思いだした。
 さて、バカたちのために朝飯を作るか。
 
 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。
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