【趣の庭】釣り三昧

2008.03.17

樋口 正博
 
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新宿一丁目にはキムラ弁護士の事務所がある。ここはキムラ弁護士のテリトリーなのだ
 

 気がついたら終電が終わっていた。しかも、目の前にはとんでもないメンツがいたのだ。場所は新宿御苑の新宿二丁目の寿司屋「郡司」。
  ぼくの目の前では、あの木村晋介弁護士が気持ちよくしゃべっている。椎名誠の名著『哀愁の町に霧が降るのだ』で、頼れる兄貴として登場しているあのキムラ弁護士。そして、嵐山光三郎御大。さらにイラストレーターの南伸坊。
  キムラ弁護士は躁状態で絶好調。得意の落語スタイルでマシンガントークを連発している。その話がまるで落語そのもの。右手と左手を交互に見ながら会話をしている。
 「ぼくの絶品落語の『椎名の手』をぜひ聞いて欲しいな。もう、みんな絶賛しているオリジナル落語なんです」
 という。ウワサには聞いていた。椎名さんが「キムラは弁護士になるには惜しい男だ。あんなに落語がうまい弁護士はいない」というほど、キムラ弁護士の落語はつとに知られているのだ。
  ぼくは、その伝説の「椎名の手」という落語の内容を知らなかったので、「どんなあらすじですか?」と、酒に酔った勢いで聞いてしまった。
 「あのね、落語のあらすじを語るほどアホらしいことはないんだよ。筋だけ聞いても仕方ない。演目なんだから、その話芸をきかなくちゃ」
 「失礼しましたぁ!」
 「えーとね、簡単にいうとこういことなんだよ…」
  もう、キムラ弁護士もいい加減酔っている。なぜ、このメンツが新宿御苑の寿司屋で深夜に渡って飲んでいたかというと、くだんの椎名誠さんと深い関係がある。

 

 

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最初は穏やかにはじまった不良中年たち

 
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キムラ弁護士の落語がはじまった。絶好調だ

 

 
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椎名さんの写真展で挨拶する嵐山さんと伸坊さん
 
  3月28日、東京ミッドタウンにある「フジフイルム スクエア」で、椎名誠さんの「ニッポンありゃまあお祭り紀行」という写真展が開催されて、そのオープニングパーティーに集まった面々なのだ。雑誌『自遊人』に4年間連載した「ニッポンあらゃまあお祭り紀行」で自ら撮影した日本全国の珍しいお祭りの写真を展示したものだ。
  この企画にはお祭り気分を盛り上げるために、椎名さんの友人である作家、女優、歌手など各界の著名人がおかめやひょっとこの面に絵を描いたものが入口にずらりと展示されている。嵐山さんも伸坊さんのお面もあった。
  そんなわけで、シーナ写真展オープニングパーティーの流れでわれわれは、いつの間にか新宿御苑の寿司屋に集まっていたのだ。
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椎名さんの写真と文章をまとめた
『ニッポンあらゃまあお祭り紀行』(カラット・1890円)
 
 

 背景説明はともかく、さっそくキムラ弁護士の名物演目「椎名の手」のさわりを聞こう。
  友情に厚い椎名には、たくさんの「魂の友」ともいえる男たちがいた。それぞれにみんな「俺こそ、シーナの本当の友人だ」と思っている。さて、面白くもおかしい、そして友情あふれたシーナにも、人生の終焉を迎える時がやってきた。
  シーナはベッドに横たわっている。そこには3人の「魂の友」が集まっていた。さて、終わりを迎えたシーナは、いったい誰の手を取って「きみのおかげでいい人生だった。ありがとう」というのだろう。
  その顛末を、キムラ弁護士は機知に飛んだ巧みな語りで演じるのだ。結末はもっとアッと驚くのだという。
 聞いてみたいッ。絶対聞きたい。すぐ聞きたい。いま聞きたい。
 「まあ、ぼくの独演会が不定期に開かれてるので、そのときに来なさい」
  と、軽くいなされてしまった。

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椎名さんが撮影した祭りの写真
 

  ときどき、記憶がとぎれて、いまとなってはまったく幻のような飲み会となってしまった。返す返すも残念だ。簡単なメモだけでも取っておけばよかった。
  嵐山さんがよく言う。
 「タコの介、メモだけは取っておけよ。ものすごく貴重なものなんだから」
  記憶力の乏しいタコの介にとっては、メモなくしてはなんにも書けない。ボイスレコーダー付きのデジカメ買おうかな。ボイスレコーダー付きの携帯のほうがいいか。真剣に悩んでいるのである。
 
 
樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。
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