【趣の庭】釣り三昧
2007.05.14
Vol.3  長井名人シリーズVol.3 もったいない話だ
樋口 正博
 いまから30年も前のこと。名人・永井裕策さんは、南伊豆・下田港から銭洲に遠征した。銭洲は神津島の南西にある広大な瀬で、沖釣り師からは 「 聖地 」 と呼ばれている。  そこは水深4000mの海底から一気に海面上まで突き出た尾根すじが集まった場所で、その全長は250qと長大な海嶺 (海底の山脈) となっている。  ここでは南から流れてきた黒潮が直接ぶち当たり、多くの複雑な分流や対流を生む。こんな場所はプランクトンの発生に適していて、それを狙って小魚が集まり、さらに小魚をエサにする巨大な魚が回遊する。
写真
釣りのときはいつも陽気な永井名人
  ヒラマサ、カンパチ、シマアジ、モロコ、イシダイ、大ダイ、大イサキなど、釣り師なら夢に見るような魚が群れるパラダイスだ。銭洲という呼び名は、ここでは高級魚が釣れて銭になるというところから付けられたともいわれている。
 永井さんはその銭洲で70sのモロコと50s、30sの2本のカンパチを釣った。これがどれほどの大物かは、モロコの市場価格がキロ当たり2万円を超えるといえば、ちょっとは想像がつくか。ともかく一生モノサイズである。 「 モロコが掛かったときは、リールが悲鳴を上げて止まらなかった。触れたら手が火傷しちゃう 」
 さて、港まで運んできたまではよかったが、どうやってこの巨大魚を家まで運ぶか…。永井さんは悩んだ。なにしろ30年も前のこと。宅配便などはない。ちなみに、クロネコヤマトが始まったのは1976年だといわれている。
  さんざん考えた挙句、当時乗っていた車のグロリアの屋根にキャリアを自作して、それに載せて下田から自宅のある藤沢まで走らせた。  ところが、走っている最中に車の屋根が魚の重みで、じわじわとへこんできた。さらには、とうとう屋根がつぶれてきた。さすがにこれでは車がダメになると思って、永井さんはその貴重な魚を道の際の海岸に捨てたという。 「 車は家までなんとか走った。だけど、屋根がつぶれて、それでそのグロリアはオシャカさ 」 「 もったいない!」  永井さんの話を聞いていた女性が叫んだ。
「 そうだよね。魚3匹のために車一台をオシャカにしちゃったんだもんなー 」 「 違うわよ。モロコよ、モロコ!」
 
永井裕策 マダイ釣りの名人。「つり丸」に「永井流 独創 マダイ釣りの真髄」を好評連載中。酒が 飲めない陽気なおじさん。
 
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樋口 正博 (ひぐち・まさひろ)
1952年、長野県生まれ。
沖釣り専門誌「つり丸」編集長。最近は釣りよりも魚料理に興味が傾いてしまった。毎月一回、嵐山光三郎さんと連載「釣って開いて」の取材に出かけるのが、おもな釣り取材となっている。
 


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