【緑の庭】牧野植物園便り

2012.1.10  

Makino Botanical Garden News


早春に食べられる若草をいくつか

牧野博士が「料理の友」で薦める

レンゲソウ、ヤブカンゾウなど
夏井 操

 
 新しい年を迎えました。一月はまだ寒いですが、新春と聞くと、すぐにやってくる春に思いをはせてしまいます。
 植物たちは成長をとめ、眠っているかのように見えますが、春に向けての準備をしており、冬の弱い日差しのなかでも芽吹くものもあります。
 そんな若菜を入れた粥を食べる七草粥は、古くは若菜の羹(あつもの。吸い物のこと)を食べ、正月に疲れた五臓六腑を整える風習でした。南北朝時代の文献『河海抄(かかいしょう)』によると当時の若菜とはアザミやヨモギ、モズクやワラビなどが挙げられ、現在の七草粥が定着したのは室町時代以降といわれています。
 牧野博士は大正14年(1925年)に『料理の友』に「萌え出づる春の若草」という原稿を寄せていて、そこで春の七草以外で早春に食べられる植物を挙げています。いくつかご紹介しましょう。


ゲンゲ

■げんげの葉

 ゲンゲAstragalus sinicus L.とはレンゲソウとも呼ばれ、早春の田圃を埋めつくす光景が印象的です。
 博士は中国の文献にこの葉が非常においしいと書かれているものを見つけ、おひたしにして食べてみました。しかし、ちっともおいしくなかったため、今度は油でいためてから胡椒、少しの醤油を加えて食べたところ、「本当に美味しかった」のだそうです。
 博士は「シロツメグサも同じように食べたら美味しかろうと思う」と続けています。


シロツメグサ

■萱草

 博士はヤブカンゾウHemerocallis fulva L. var. kwanso Regelの、早春に生える、ユリのようで薄緑色をしている若葉を、根元から取って、湯引きして酢味噌和えにすると甘みがあっておいしいと紹介しています。
 また、花や明日咲きそうなつぼみを摘んで牛鍋に入れると甘みがあって大変おいしい、三杯酢にしてもおいしい、と続けています。
 わたしは同じ仲間のノカンゾウの若葉や花を三杯酢で食べたことがあります。いずれもしゃきしゃきとした歯ごたえがあって、大変良い肴になりました。


ノカンゾウ

■浜防風

 博士は、海辺へ行くならハマボウフウGlehnia littoralis F.Schmidt ex Miq.を採られるとよい、と薦めています。
 「この若い葉は刺身のツマにすることがあり、紫色を帯びてすこぶるおいしい。春の砂地を分けて茎やら葉柄やらを採ってきておひたし、三杯酢で食べると誠においしい。青いところよりも砂に埋まった白いところを賞味する」、と続けています。
 セリの仲間で、香りがよいことでしょう。一度試してみたいものです。


ハマボウフウ

■毒のあるモノには注意を

 ほかにもタネツケバナの油いためやコウゾリナのおひたしなど様々な野草と食べ方を紹介し、「食べられる野草がたくさんあるのだから、大いに草を摘んでその食べ方を新たに研究してほしい、また毒と間違ってはいけないので、指導者がいることが望ましい。興味深く、かつ知識を養う上でも生きた野外の指導方法だろう。」と、野草摘みを薦めています。
 そしてわたしが今回学んだのは、博士は料理に創意工夫の人であり、また食いしん坊であるということでした。

(高知県立牧野植物園学芸員)




▼インフォメーション

■企画展ご案内

 ○開催中○7月16日(土)〜4月8日(日)
「植物を知ろう!」
http://www.makino.or.jp/
内容/植物は、わたしたちの暮らしに役立つだけでなく、唯一の生産者として地球上のすべての命を支えています。本展では、身近な植物をテーマに、植物の受粉の仕組みやタネの飛ばし方など、植物たちの知恵や工夫を、春夏秋冬を追って紹介します。観察したり、模型をさわったり、工作をしたり、体験しながら植物のことが分かる企画展です。
観賞料/無料(但し、入園料が必要です)

高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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