【緑の庭】牧野植物園便り

2011.11.8  

Makino Botanical Garden News


牧野博士がタマムラサキを別種として発表

朝露を受けて紫色にキラキラ光る
夏井 操

 
  11月ごろに明るい草むらを訪れると、えんじ色のヤマラッキョウAllium thunbergii G.Donの花を見かけることがあります。
わたしたちが普段口にするラッキョウは、もともと中国が原産のもので、ヤマラッキョウと同じく、えんじ色の美しい花が咲きます。広大なラッキョウ畑は、晩秋ならではの景色で、とても美しいものです。


ヤマラッキョウ

■一つの茎に多く咲くヤマラッキョウ

 ヤマラッキョウは本州(福島県以西)〜朝鮮半島、中国本土や台湾に分布するもので、ラッキョウに比べ、一つの茎に花が多くつきます。ラッキョウほど地下の鱗茎が太らないので食用にはなりませんが、根や葉にはネギ類特有の香りがあります。
 私が高知市内にムラサキセンブリを見に行った時、周りにヤマラッキョウが咲いていました。ムラサキセンブリは蛇紋岩地に生える植物で、ヤマラッキョウも蛇紋岩の影響を受けてか、通常40〜50cmほどになるところ、さほど背丈は高くなっていないようでした。


ムラサキセンブリ

■ニラ葉のタマムラサキタイプ.

  ヤマラッキョウの葉はネギのように中が空洞になっているものが一般的ですが、牧野博士はヤマラッキョウの中でも、葉がニラのようにやや幅が広く、偏平になるタイプを対馬で発見しており、1910年にタマムラサキを別種とし、Allium pseudojaponicum Makinoとして発表しました。その後の分類では、ニラ葉のタイプは区別せず、ヤマラッキョウと同一視されているようですが、葉の形状で区別した牧野博士の着眼点はとても興味深く、近年も染色体数などを視点に加え、研究が進みました。
 その結果、ヤマラッキョウは@本州〜四国、九州に広く分布する、葉がネギのような中空のタイプ、A本州南部、四国や隠岐、九州の海岸に多いニラ葉のタマムラサキタイプ、そしてB九州南部に生育する、葉が線形で中が詰まったタイプという3つのタイプにわけられることが分かりました。


ヤマラッキョウ

■高知で見つけたタマムラサキ?

  高知県でもヤマラッキョウは標高の高い三嶺(1893m)から海岸にほど近いところまで見受けられます。高知県下でもいろいろな産地のものの葉を比べてみたらおもしろいでしょう。
 私が高知市内で見たヤマラッキョウはニラ葉のようでした。牧野博士のいうところのタマムラサキだったのかもしれません。朝露に秋の弱い日差しを受けて、キラキラ光る姿が印象的でした。


ヤマラッキョウ

(高知県立牧野植物園学芸員)




▼インフォメーション

■企画展ご案内

 ○開催中○7月16日(土)〜12月4日(日)
「植物を知ろう!」
http://www.makino.or.jp/
内容/植物は、わたしたちの暮らしに役立つだけでなく、唯一の生産者として地球上のすべての命を支えています。本展では、身近な植物をテーマに、植物の受粉の仕組みやタネの飛ばし方など、植物たちの知恵や工夫を、春夏秋冬を追って紹介します。観察したり、模型をさわったり、工作をしたり、体験しながら植物のことが分かる企画展です。
観賞料/無料(但し、入園料が必要です)
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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