【緑の庭】牧野植物園便り

2011.9.6  

Makino Botanical Garden News


葉の上に紅色のあでやかな花

秋の気配を呼ぶツリフネソウ
夏井 操

 
 ツリフネソウという名前は、帆かけ舟を吊ったような花の形からついたものです。
 同じ仲間によく知られるホウセンカがあり、ホウセンカと同じく、果皮が内側に勢いよくまくれ上がり、中の種子がはじけ飛びます。
 ツリフネソウ属の属名Impatiens(インパティエンス)は、“我慢できない”という意味で、果実がはじけるようすを表したものです。日本には3種が分布しており、今回はそれらを紹介します。


ホウセンカ

■ハガクレツリフネImpatiens hypophylla Makino

 白っぽい距(きょ)をもつ花を、葉の下に咲かせるハガクレツリフネ。牧野博士が1911年に命名した種小名hypophyllaも「葉の下」という意味です。発表した『植物学雑誌』には標本の採集場所として土佐・奥名野川、肥後・深葉山、阿蘇郡永水村、阿波、大和遠野峰などが挙げられています。ハガクレツリフネは本州の近畿地方、四国、九州、朝鮮半島南部といった、いわゆる襲速紀(そはやき)地域に分布します。
 距とは花びらが管状になった部分のことで、先には蜜が入っています。ハナバチが蜜を吸いに花にもぐり込む際、背中に雄しべ、雌しべが当たり、受粉するしくみです。


ハガクレツリフネ

■キツリフネImpatiens noli-tangere L.

 キツリフネは花全体が黄色く、距があまり巻きません。北海道から九州まで全国的に分布するだけでなく、北半球では広く見られるようで、学名は250年も前である1753年にリンネが命名しています。種小名noli-tangereは“触るな”という意味で、やはり果実がはじけることに由来します。


キツリフネ

■ツリフネソウImpatiens textorii Miq.

 葉の上に紅色のあでやかな花を咲かせるツリフネソウは、九州以北に見られ、他にも朝鮮半島や中国東北部など東アジアに主に分布します。花期は、他の2種が晩夏に咲くのに対して本種が一番遅く、この花が見られるようになると秋の気配を感じます。牧野博士の記述には「横雲草」ともよばれるとありますが、現在この呼び名はほとんど使われていないようです。


ツリフネソウ


 これら3種のツリフネソウの仲間はいずれも水気を好み、渓流沿いや湿地、木陰などやや湿った場所で旺盛に花を咲かせます。一年草で、毎年種子を残して本体は枯れます。
 8月14日、私は高知県仁淀川町にある雑誌(ぞうし)山(1328m)の、西にある空池に行き、ハガクレツリフネやコバギボウシに出会いました。みなさんも風に揺れるツリフネソウのなかまに会いに、晩夏の山に足を運んでみてはいかがでしょうか。


コバギボウシ

(高知県立牧野植物園学芸員)




▼インフォメーション

■企画展ご案内

 ○開催中○7月16日(土)〜12月4日(日)
「植物を知ろう!」
http://www.makino.or.jp/
内容/植物は、わたしたちの暮らしに役立つだけでなく、唯一の生産者として地球上のすべての命を支えています。本展では、身近な植物をテーマに、植物の受粉の仕組みやタネの飛ばし方など、植物たちの知恵や工夫を、春夏秋冬を追って紹介します。観察したり、模型をさわったり、工作をしたり、体験しながら植物のことが分かる企画展です。
観賞料/無料(但し、入園料が必要です)
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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