【緑の庭】牧野植物園便り

2011.8.9  

Makino Botanical Garden News


樹上で芽を出し成長を始める

“絞め殺しの木”と呼ぶ人も
夏井 操


室戸のアコウ

 牧野植物園の展示館から南園に向かう連絡道には種子から育てたアコウが5本植えてあります。平成9年ごろ、高知産のアコウから種子を採って蒔いたもので、気根と呼ばれる根が園路の石垣を抱え始めています。

■温暖な土地で育つ

 アコウFicus superba (Miq.) Miq. var. japonica Miq.は紀伊半島、四国、九州、西南諸島の温暖な地方に生えるクワ科の植物です。イチジクに似た実がなりますが、サイズは3cm程度で、実のなかに細かい種子ができます。
気根というのは根が土のなかではなく空中に出たもので、アコウの場合、イチジクに似た実を鳥がついばみ、種子がフンと混ざって樹木の枝につくと、空気中の湿度を利用し、樹上で芽を出し成長を始め、やがて根をはりめぐらせ覆い被さり、そのうちに宿としていた樹木を枯らしてしまうことがあります。“絞め殺しの木”と呼ばれるゆえんです。   
室戸岬には岩を抱いたアコウが、また足摺岬には宿主を絞め殺し、内部が空洞化したアコウがあり、どちらも見応えがあります。


室戸のアコウ


足摺のアコウ


足摺アコウの洞

■五台山を埋め尽くす

 牧野博士は、このアコウで牧野植物園のある五台山を埋め尽くしたかったようです。晩年に交友があった武井近三郎氏への手紙がまとめられており、出版されています(『牧野富太郎博士からの手紙』武井近三郎 1992)。
その中でアコウがたびたび話題に出てきました。武井氏は牧野博士に勧められ、アコウの種子からたくさんの苗をつくっていました。
博士の手紙には「ご苦心のアコウの苗も大分出来し由、私の考えではこれを五台山下、青柳橋詰から泊船岸辺までの間に多植して、そこをアコウの林としたら見るにも珍しく最致もよく大いに南国気分も出て面白くないかと思います。」とあります。
ただし植えることも検討されたようですが、実現には至りませんでした。武井氏は牧野博士に苗を贈り、博士はそれを盆栽にして楽しんでいたそうです。

■アコウを植え込む

 牧野植物園の温室の入口には、コンクリートでできた塔があります。数カ所に窓を開け、アコウを植え込み、数年後には塔がアコウに包まれ、足摺のようなアコウの洞(うろ)の再現となるのを期待しています。また、牧野植物園の正門のアコウも大きく育っており、入口周辺の石垣がアコウで覆われるのを心待ちにしています。牧野博士が思い描いたアコウの森は、形を変え、植物園で少しずつ育っています。


植物園のアコウ

(高知県立牧野植物園学芸員)




▼インフォメーション

■企画展ご案内

 ○開催中○7月16日(土)〜12月4日(日)
「植物を知ろう!」
http://www.makino.or.jp/
内容/植物は、わたしたちの暮らしに役立つだけでなく、唯一の生産者として地球上のすべての命を支えています。本展では、身近な植物をテーマに、植物の受粉の仕組みやタネの飛ばし方など、植物たちの知恵や工夫を、春夏秋冬を追って紹介します。観察したり、模型をさわったり、工作をしたり、体験しながら植物のことが分かる企画展です。
観賞料/無料(但し、入園料が必要です)
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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