【緑の庭】牧野植物園便り

2011.5.10  

Makino Botanical Garden News


大輪の花を咲かせるサクユリ

雨戸を開けるとその佳香が鼻をうつ

カサブランカの母種とも
夏井 操


  牧野博士は1900年、渾身の著書『大日本植物志』に、サクユリLilium platyphyllum (Baker)Makinoを発表しています。

  威風堂々とした大輪のユリ。私は博士のその図のことを先に知っており、実物を見た時はその迫力に圧倒されました。

  本州に咲くヤマユリLilium auratum Lindl.もゴージャスですが、サクユリはそれよりさらに一回り大きく、カサブランカの母種とも言われています。

タメトモユリとも

  牧野博士は『大日本植物志』で、その出版を牧野博士にゆだねた東京帝国大学の総長、濱尾新に献名し、ヤマユリの変種として位置づけ、Lilium auratum Lindl. var. hamaoanum Makinoとしていますが、同年、一足先にイギリスの植物学者John Gilbert Baker(1834-1920)がLilium auratum Lindl. var. platyphyllum Bakerという学名で発表していました。

  牧野博士はその後1914年、ヤマユリの変種ではなく別種として学名を改めています。またサクユリという和名もその時に新たにつけられたもので、自生地である伊豆諸島では大島に流された平安時代の武将、源為朝を偲び「タメトモユリ(為朝百合)」と呼ばれていました。

  サクユリの「サク」は、青ヶ島の方言でこの花を「サックイネラ」と呼ぶことから作の当て字で書いた、と牧野博士は遺稿『我が思い出』のなかで述べています。ちなみに「イネラは百合の事で、青ヶ島方言であると、先年それを庭へ作っていた田村利親氏に聞いたことがあった。」と別のページで続けています。


東京の自宅で写生

  田村氏は牧野博士と同じ高知県出身で、博士の親友。はるばる青ヶ島からサクユリの鱗茎を取り寄せ、博士に送ってくれました。博士が東京の自宅の庭に植えたところ花が咲いたので、それを写生し、『大日本植物志』に掲載したのだそうで、いうなれば田村氏のおかげでわたしたちは現在博士のすばらしい図を目にすることができるわけです。

  牧野博士はこのサクユリをたいそうお気に召していたようで、「日本産、百合のキングは何と言ってもサクユリ」「朝暁、雨戸を開けるとその佳香が鼻をうち、実に日本のユリの大関格だ」と述べています。

  3月から牧野植物園で行っている「五台山花絵巻 弐の巻〜和蘭の春〜」。5月末から6月にかけて、高知県の郷土料理「皿鉢(さわち)料理」に見立てた「花皿鉢」を、オランダで作出された最新品種のユリで飾るのにあわせ、5月20日〜6月5日にはオランダ商館の医師として日本を訪れたシーボルト、そしてシーボルトが愛した花、ユリとアジサイをテーマに「日蘭交流の花 ユリとアジサイ展」を開催します。牧野博士のサクユリの図も、常設展示で現在展示しており、展示館中庭には、サクユリやタキユリが咲き誇ります。さわやかなユリの香りに包まれる植物園をお楽しみいただきたいと思います。

(高知県立牧野植物園学芸員)

園内の見頃の花


ウンナンハギ


カマヤマショウブ


トビカズラ


ハマエンドウ


ハンカチノキ


ヒトツバタゴ


ヘリコニア




▼インフォメーション

■開催中企画展ご案内

 ○3月5日(土)〜7月3日(日)
志国高知 龍馬ふるさと博
「五台山花絵巻 弐の巻 〜和蘭(オランダ)の春〜」開催中!
http://www.makino.or.jp/event_news/pdf/waran.pdf
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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