【緑の庭】牧野植物園便り

2011.3.8  

Makino Botanical Garden News


スイセンを6千球  園内に植える

「一つの金杯を載せた清楚潔白な花」と牧野博士
夏井 操


ニホンズイセン

  高知県では3月5日から7月3日の日程で、「志国高知 龍馬ふるさと博」と題した観光イベントが、「偉人」「花」「食」「体験」の4つをテーマに、県下全域で展開されています。坂本龍馬の故郷である志の国、高知の魅力をたっぷりとPRしたいというのがこのイベントの狙いです。

■「花」のテーマ会場に

  牧野植物園は「花」のテーマの会場の一つとして位置づけられ、「五台山花絵巻 弐の巻〜和蘭の春〜」と題して、高知県と友好園芸農業協定を結んだオランダ・ウェストラント市とのさらなる交流を願い、オランダで作出されたスイセンを初めチューリップ、ユリの最新品種で植物園内を飾ります。スイセンについては、今回のイベントのオープンにあわせ、園内の芝生の広場の周りに6000球植えました。

■ペルシアからシルクロードを経て日本に

  ということで、今回はスイセンにまつわる話です。

  スイセン属(ヒガンバナ科)はスペイン、ポルトガルから地中海沿岸、アフリカ北部が原産の球根植物です。野生種は約30種ですが、園芸品種が多く作られ、1629年にはすでに100品種近く、また1950年代には10,000品種を超える園芸品種が記録されています。


園芸品種の一種

  日本で野生化し、各地の水仙郷で見られるニホンズイセンNarcissus tazetta var. chinensisも元来は地中海沿岸地方の原産と考えられています。

  スイセンは、古くはペルシアからシルクロードを経て中国に渡来し、その後日本には、海流によって流されてきたとも、人によってもたらされたとも言われています。

  牧野富太郎博士は著書『牧野植物一家言』のなかでスイセンに触れ、「水仙は海辺植物であり、あるチャンスがあって海岸の地が崩れ、水仙の球が海に浮かび出ることがあれば、流れ流れてどこかの海浜に漂着し、そこでさらに繁殖を始める」と記し、さらに強固な球根は海水にも強いため、「幾日潮水に漬かっていても、少しもビクともしない」と述べています。

■花の極めて上乗なもの

  牧野博士はスイセンについての記述を随所に残していますが、特にニホンズイセンについては同じく『植物一家言』で、「何と言っても花の極めて上乗なもので、一つの金杯を載せたその清楚潔白な花は天国の花と誇称しても決して不可はあるまい」と称賛しています。


ニホンズイセン

■牧野博士の都々逸

  さらに、牧野博士は、「為永春水の『梅暦』という本に『野に捨てた傘に用あり水仙花』という句がある。今日の人々にはこんな雅懐と同情とを抱く人はまず少なく、多くは明けても暮れても金銭の感情に思いを労しているばかりである。ああ、世の中も一変したものである。」と語り、次の都々逸を残しています。

  金の奴隷の今日この頃は、花の水仙要は無い

  花の中なる黄金の杯も、両替出来ねば持ち腐さり

  ニホンズイセンは白い花に副花冠と呼ばれる黄色いカップ状の花びらがついていますが、園芸品種のなかには黄色い花に黄色の副花冠のもの、花の大きさに対して副花冠が長いもの、短いもの、八重咲きのものなど、さまざまなものがあります。


八重咲き品種

  すがすがしい香りと風に揺れるさわやかな花姿。牧野博士の都々逸をクスリと笑いながら、その魅力に酔ってみてはいかがでしょうか。

(高知県立牧野植物園学芸員)

▼インフォメーション

■開催中企画展ご案内

 ○3月5日(土)〜7月3日(日)
志国高知 龍馬ふるさと博
「五台山花絵巻 弐の巻 〜和蘭(オランダ)の春〜」
http://www.makino.or.jp
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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