【緑の庭】牧野植物園便り

2011.2.8  

Makino Botanical Garden News


洋ランに和名をつける

天皇陛下のご質問にも備える
夏井 操


カトレアの一品種

  牧野富太郎博士が東京大学に出入りを始めたのは1884(明治17)年、22歳のころでした。

  当時、海外から珍しい植物が次々に日本に導入されました。しかし、カトレアやオンシジウムなど学名がカタカナ読みで、聞いたこともなければ見たこともない植物に、当時の人たちは、興味はあっても親しみにくかったことでしょう。


オンシジウムの一品種

■園芸植物に新和名を下す

  1916(大正5)年、『植物研究雑誌』第1巻第1号のなかで牧野博士は「園芸植物に新和名を下す」とし、50にもわたる植物の和名を提唱しました。後にその背景を詳しく述べています。

  大正2年11月、東京新宿の植物御苑に兼勤していた牧野博士は、当時同園を管理していた福羽逸人先生に呼ばれました。

■宮内大臣からの命

  福羽先生は牧野先生に「温室のランに和名をつけてほしい」と依頼します。

  これは宮内大臣からの命で、宮中での宴会で大臣が天皇陛下のおそばにつき、テーブルの上の盛花についてご質問を受ける時、お答えするのに学名洋名ではわかりにくく、誠に不便だというのです。

  「陛下のご質問にお答えするときは、新和名は牧野富太郎がつけたものであることもお伝えする」といわれ、これに対して牧野博士は「これを謹聴し、その無上の光栄であることに感泣しつつお受けして、直にその花についての和名を謹製し、さっそくこれを福羽先生に復命したので同先生も大いに満足せられたことがあった」(書き下し文)と述べています。


バンダ・セルレア(翡翠蘭)

■千代胡蝶など

  例を挙げると、コチョウランの一種Phalaenopsis amabilisには千代胡蝶(ちよごちょう)、バンダの仲間Vanda coeruleaには翡翠蘭(ひすいらん)、オンシジウムの一種Oncidium tigrinumには虎斑雀(とらふすずめ)、デンファレと呼ばれるDendrobium phalaenopsisは胡蝶石斛(こちょうせきこく)、カトレアの一種Cattleya labiataには日の出蘭(ひのでらん)という具合です。

  牧野博士は、これらの和名をつけるとき、その名前が優雅でかつ真を表し、しかも百花中の極致であると誰もが許すランにふさわしいものでなくてはならん、と苦心したそうです。


デンファレ(胡蝶石斛)

■カタカナ読みが一般化

  しかし、その後まさに怒涛のごとく導入された海外の植物すべてに和名をつけることもできず、今では学名のカタカナ読みが一般化しています。インターネットでこれら和名を検索しても精確な学名は拾えず、牧野博士がつけた和名は細々と、しかも大雑把に片鱗が残るに過ぎないようでした。

  牧野植物園では2月5日〜20日、昨年4月にリニューアルした温室で、初めてのラン展を開催します。以前の温室がドーム型だったのに対し、新しい温室は箱型で天井空間が広いため、今年はその空間を活かしたディスプレイを予定しています。

  シンボルタワーとなる「オーキッドスカイツリー」も登場。先に挙げたバンダやカトレア、デンファレなどを華やかに飾りますので、みなさんどうぞお楽しみにいらしてください。


ファレノプシス・アマビリスから作られた品種

▼インフォメーション

■開催中企画展ご案内

 ○2月5日(土)〜20日(日)/第5回ラン展「蘭 〜魅惑の花〜」
http://www.makino.or.jp/event_news/ev-02.html#t02_1
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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