【緑の庭】牧野植物園便り

2011.1.11  

Makino Botanical Garden News


黄金を堆だかく積み上げた様

海岸の足元を装飾
夏井 操


 

  冬、高知ではノジギクやシオギクをはじめ、野生のキクの仲間が海岸線を彩ります。中でも12月から1月にかけて、林のふちなどに鮮やかな黄金色の花を群れて咲かせるタイキンギクは、ひときわ目を引きます。先日、高知県安芸郡安田町の海岸周辺を訪れた時、私はフェンスからあふれだすかのような黄色の花に圧倒され、何回もカメラのシャッターを切ったことでした。
 

■牧野博士名をつける

 タイキンギクSenecio scandens Buch.-Ham. ex D.Donは、和名を漢字で表すと"堆金菊"。この名は牧野博士がつけたものです。この和名を発表した文献『植物学雑誌』第10巻第115号(1896年発行)で、博士は「久礼港南興津岬(高知県中土佐町)から赤野以東唐の浜(高知県安芸郡安田町)で見られる」と報告し、さらに続けて「海岸の足元を装飾し金光燦然極めて美観なり」「歳寒草木黄落しつき、独りこの花の開花を見る。その地に採集する人は実に無上の興味を感ずべし」と花を称賛しています。その論文のタイトルには「日本フロラ中二種の稀品」とあり、私はちょっと驚きました。


タイキンギク

■台湾や中国では山中にも

  高知県の海岸近くでは割と多く見られるので、どこにでもあるのかと思っていましたが、分布を調べてみると高知県、徳島県の一部、和歌山県の海岸線と限られており、全国的にみればとても珍しいものであることがわかりました。
 海外では台湾や中国南部、タイ、ミャンマー、ネパールまで分布しますが、それらの分布域と日本の分布域をつなぐ位置にある九州にないのが不思議です。日本ではあたたかい地域の海岸付近で見られますが、台湾や中国では山中に見られるそうです。


■郷里の誇るべき花

  牧野博士は遺稿『我が思ひ出』の中の「土佐植物一斑」で「堆金菊の意、牧野命名」と断ったあと、「黄金を堆(うず)だかく積み上げた様の観を呈すから、それでそれをそう名付けたのである」と記しています。晩年、土佐の植物に思いめぐらせ、タイキンギクを書きとめた博士。厳しい寒さの中で光り輝くタイキンギクは、博士にとって郷里の誇るべき花でした。


 

▼インフォメーション

■開催中企画展ご案内

 ○2011年2月13日(日)まで/企画展「樹と言葉展」
http://www.makino.or.jp/update/kitokotoba-top.html
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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