【緑の庭】牧野植物園便り

2010.12.14  

Makino Botanical Garden News


根をつぶして水にさらすと「鳥もち」が

花を咲かせタネをつくる種子植物
夏井 操


ツチトリモチ

 前回は、ブナ科シイ属の根に寄生するヤッコソウをご紹介しました。
 今回は同じ寄生植物でもハイノキ科ハイノキ属などの根に寄生するツチトリモチを紹介します。
 牧野博士が学名をつけた植物ですが、ヤッコソウと同じく栽培ができないため、牧野植物園では模型を展示しています。

■三重県以西に分布

 ツチトリモチBalanophora japonica Makinoはツチトリモチ科の植物です。
 三重県以西の本州、四国、九州と西南諸島で10〜12月に見られます。一見キノコのように見えますが、花を咲かせタネをつくる種子植物です。
 ただ、花は表面に見える赤い粒状の棍体(こんたい)の根元にごく小さいものが咲くため、見ただけではわかりません。日本に分布する同じ仲間には、やや標高が高いところでカエデやシデに寄生するミヤマツチトリモチや、鹿児島市喜入町で初めて見つかったキイレツチトリモチなどがあります。


ツチトリモチの模型

■「鳥もち」が作れる

 牧野博士は1902年にこのツチトリモチを発表していますが、それ以前からこの奇妙な植物の存在を知っていました。
 というのも、命名する前に牧野博士は高知県で採集したツチトリモチの標本を東京大学に送り、またその写生図を東京の博物局に送ったと『植物研究雑誌』第5巻第2号で述べているからです。
 ツチトリモチの和名は、この植物の根をつぶして水にさらすと、小鳥を捕まえるための、粘着力のある"鳥もち"がつくれることに由来します。
 ほかにも、モチノキ、クロガネモチなどの樹皮が"鳥もち"として利用されていました。ただし、モチノキなどは夏に剥いだ樹皮を秋まで水にさらし、臼でひいたものを水で洗って作るため、たいそう時間と手間がかかります。
 でも、このツチトリモチをつかうと水洗いしながら木づちでたたき、20〜30分で"鳥もち"が作れるそうです。


■牧野博士の生家近くにも

 牧野博士はツチトリモチの利用について、"鳥もち"のほかに「肥後の水俣地方にあっては、各家庭で、主に夏、蠅捕り用としている」と紹介しています(『植物一家言』)。マダケの筍の皮に延ばして蠅が来るところに置く、すなわちハエ捕り紙をツチトリモチで作っていたのだそうです。
 私が初めてツチトリモチを見たのは高知県高岡郡佐川町、牧野博士の生まれた町でした。里山に足を踏み入れると山道のそばに生えていました。ヤマデラボウズ、ツチモチなど、さまざまな別名があるようで、人の生活に程近いところで見られる珍奇植物は、各地でなじみ深いものだったようです。


ツチトリモチ

▼インフォメーション

■開催中企画展ご案内

 ○2011年2月13日(日)まで/企画展「樹と言葉展」
http://www.makino.or.jp/update/kitokotoba-top.html

 ○12月11日(土)〜25日(土)/温室クリスマスイベント
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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