【緑の庭】牧野植物園便り

2010.11.15  

Makino Botanical Garden News


奴さんが袂を突っ張っている姿

室戸や足摺の周辺に咲く
夏井 操


ヤッコソウ

 牧野植物園の牧野富太郎記念館、展示館周辺には、牧野博士が壽衛夫人の名をつけたスエコザサや、発見地である横倉山にちなんで命名したヨコグラノキなど、博士ゆかりの植物が植栽されています。

■小さな奴さんのお祭り

 中でも、模型で展示しているのがヤッコソウとツチトリモチ。どちらも博士が命名した植物ですが、寄生植物であり園内で栽培ができないためです。実物大だと小さくて分かりにくいので、特大サイズで模型は作られていて、「こんなに大きいのか」と驚く方もいらっしゃいます。
 ヤッコソウMitrastemma yamamotoi Makinoは姿かたちを江戸時代に主人の行列で、供先を勤めた奴さんに見立てての名前です。
草丈は約4cm、よく見ると確かに奴さんが袂を突っ張っているような形をしています。分布の北限は徳島県、高知県では室戸岬や足摺岬の周辺で、11〜12月ごろ、シイ属の樹木の根元に見ることができます。


ヤッコソウの模型

■幡多郡で採取

 1906(明治39)年12月、高知県師範学校の山本一教諭が生徒を連れて高知県幡多郡に植物採集にでかけたところ、生徒の一人がみかけない植物を採集しました。
そこでこの標本を、後の東京大学農学部教授、草野俊助博士を通じて牧野博士に送ったのでした。牧野博士は新種と考え、山本教諭にさらなる標本や写真、写生図をお願いし、ついに1909(明治42)年、植物学雑誌に新属新種として発表しました。
 学名の種小名は山本教諭を記念してyamamotoi(ヤマモトイ)とし、和名も同時につけました。ヤッコソウという和名について、東京大学の三好学博士が「極めて好い名である」と褒めてくれた、と博士は喜んでいます。1911年にはヤッコソウ科として記載し、1科1属1種の珍種として位置づけられました(現在ではヤッコソウ科の植物は1属2種、研究者によっては6種とされています)。


■鹿児島にも

 なお、1909年の論文の中で牧野博士は「これが最初の発見である」と述べていますが、植物学者、田代安定により1884年以前に「鹿児島県柑橘図」という本の中で「未詳の寄生植物、大隅国(鹿児島県)田代郷深山中産」と記され、また図が掲載されており、牧野博士は1910年、植物学雑誌でその旨を発表しています。
 私が初めてヤッコソウを見た時、地面から指が出ているように見えて驚きました。今では小さな奴さんたちがお祭り騒ぎをしているみたいで愛嬌を感じます。
ちょうど今頃の季節、室戸岬の最御崎寺や金剛頂寺の境内で見られますので、ぜひ皆さんも実物をご覧になってみてください。


ヤッコソウ

▼インフォメーション

 ■次回企画展予告
・10月23日(土)〜2011年2月13日(日)/企画展「樹と言葉 展」
http://www.makino.or.jp/update/kitokotoba-top.html

■牧野植物園 秋冬の催し
・11月20日(土)・21日(日)/野点と秋の野の花観察会
・11月20日(土)〜28日(日)/菊花展
・12月11日(土)〜25日(土)/温室クリスマスイベント
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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