【緑の庭】牧野植物園便り

2010.7.12  

Makino Botanical Garden News


水中のミジンコやぼうふらを食べる
モウセンゴケ科の食虫植物


牧野博士が和名をつけたムジナモ

夏井 操
 ハエトリグサは、虫が葉のセンサーに触ると0.3秒の早さで2枚の葉を閉じ、挟み込んでしまいます。食虫植物の鮮やかな、狩猟の手口は何度見てもあきません。食虫植物について、ご紹介しましょう。


(ハエトリグサ)


(ムシトリスミレの一種)

■夏休みの小学生に人気

 夏休みの宿題を抱えた小学生をターゲットに、夏の盛りの今、全国の植物園で食虫植物の展示が行われます。動かないはずの植物が動き回る虫を捕まえて食べるというおどろきと不思議の世界に、おとなも子どもも夢中です。
 ハエトリグサと同じように、水中のミジンコやボウフラをはさんで捕まえる、モウセンゴケ科のムジナモという植物があります。ムジナとはアナグマのことで、ムジナモの形をアナグマのしっぽに見立てて、牧野博士が和名をつけました。水辺に生える食虫植物で、タヌキモというのがすでに知られており、こちらはタヌキのしっぽに見立てた名前です。


(ムジナモ)

■江戸川の土手でムジナモを発見

 牧野博士は1890年5月11日、ヤナギの実の標本を採ろうと、南葛飾郡小岩村伊予田(現在の江戸川区)に行きました。江戸川の土堤のヤナギを手折ろうとしたその時、ふと水面に目をやると、変なものが浮いています。
 取り上げると見たこともない水草で、大学に持ち帰ってみんなに見せました。教授が文献を探してくれ、これが当時、ヨーロッパとインド、オーストラリアのみに産するとされていたAldrovanda vesiculosa L.だということがわかったのです。その年11月発行の植物学雑誌でこの植物に「ムジナモ」という和名を与えました。
 ロシアのマキシモヴィッチに標本を送ると、「この植物はヨーロッパでは花を開くことが少ない。日本産のものはいかがですか」と返事があったため、牧野博士は日本産のものも花が咲くことはあまりないだろうと思っていたそうです。


■花が咲いた

 ところが翌1891年7月27日、学友から「花が咲いている」との報をうけて、さっそく研究しました。
 ちょうどそのころ大学への出入りを禁止された博士は、友人の池野誠一郎の助けを借りて、農科大学の研究室で精密な図を描いています。後にこの図はドイツの植物分類学の書物で紹介され、牧野博士の名前は世界にとどろいたのでした。
 ところでムジナモですが、その後茨城県や京都府などで次々と発見されました。しかし埋め立てや農薬の被害、また自然災害などで相次いで消滅してしまい、1967年には最後の自生地で野生絶滅したといわれています。博士が発見してわずか77年のことです。現在は全国の植物園やかつての自生地周辺の施設で保護、増殖されており、牧野植物園でも食虫植物展で展示します。みなさんにはぜひ実物を観察して、いろいろ感じ取ってもらえたら嬉しいです。
 

(ウツボカズラの一種)

(サラセニアの一種)


▼インフォメーション

■高知県立牧野植物園 4月24日新温室オープン!

 7/17〜25新温室に大集合!「食虫植物展」

■企画展も開催中!
 「牧野植物園 研究活動展−植物研究がもたらす豊かな暮らし」〜9月5日(日)まで
牧野植物園では、1999年のリニューアル以来、わたしたちの生活に欠かせない植物 について、植物分類学と有用(薬学)植物学の2つの視点で新たな植物の利用の可能性を探ってきました。わたしたちの暮らしを豊かにする牧野植物園の10年の植物研究 活動や成果を紹介します。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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