【緑の庭】牧野植物園便り

2010.4.19

Makino Botanical Garden News


朱色のオン(雄)と藤色のメン(雌)の花が咲く
牧野博士と高知のツツジ


夏井 操

 牧野博士は晩年の著書「我が思ひ出」の中で、懐かしそうにこう書いています。「私は子どもの時分に、ツツジの花を採りに行くのが最も楽しく、山を見渡してみると褐色を帯びた小藪の樹の間に、そこ、こことその花が咲いていたのは誠に印象的であった」。サクラの花が終わるころ、山を彩るツツジたち。土佐の山を歩き回った牧野少年の目には、どんなツツジが見えたのでしょうか。


■雄々しいオンと女性的なメン

 高知の山にはオン(雄の意味)とメン(雌の意味)のツツジが咲きます。朱色で花冠が5cmにもなろうかとするオンツツジと、藤色で花冠が3cm程度のメンツツジ(フジツツジ)です。オンツツジが雄々しい印象を受けるのに対し、メンツツジは女性的な印象を与えるためについた名前です。
 メンツツジの方が早く咲き、それが終わるころにオンツツジが咲き始めます。オンツツジは本州(紀伊半島)・四国・九州と、割と広く分布し、メンツツジは四国でも高知県の太平洋側と愛媛県の一部、あと九州の一部のみに見られます。
 メンツツジはその花色からフジツツジと呼ばれることが多く、オンとメンの対比はその両種が咲く土地ならではの呼び名なのかもしれません。関西や中国地方では、コバノミツバツツジといって、紫色の花をつけるツツジが山肌一面に咲きます。それが、四国に渡るとオンツツジの朱色に代わり、山が燃えているように見え、それは見事です。

■オンツツジ

 牧野博士ははじめ、このオンツツジを、「アカツツジ」と呼び、1892年に発表していました。その後、土佐の方言で「ホンツツジ」というのだと教わり、1895年には和名を「ホンツツジ」とあらためる事にしました。さらにその後「ホンツツジ」ではなく「オンツツジ」であったこと、しかも和名の由来が方言でメン(雌)に対しオン(雄)であったことがわかったと1924年に発表し、現在は「オンツツジ」が使われるようになっています。
 一方で、フジツツジは牧野博士が「ロドデンドロン・トサエンセ」と、土佐を冠した学名を付けています。またトサノミツバツツジというツツジにも牧野博士は学名をつけています。
 高知のツツジに親しんだ牧野博士は、晩年、大いに誇るに足るツツジ、と郷里のオンツツジについて話をしています。あの赤いツツジが咲いているときに高知に行こうと思う、と。その願いは叶いませんでしたが、ふるさとの山を脳裏に浮かばせ、牧野博士は少年のころを思い出したのでしょう。

▼インフォメーション

 企画展開催
「牧野植物園 研究活動展 −植物研究がもたらす豊かな暮らし」
開催期間/3月20日(土)〜9月5日(日)

4月24日 南園に新温室オープン!
新温室オープニング記念−「土佐・龍馬であい博」連携イベント
「誕生! 碧の宝石箱 −発見と感動、熱帯の旅へ」開催
開催期間/4月24日(土) 〜 6月27日(日)

詳しくは、ホームページをご覧ください。
高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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