【緑の庭】牧野植物園便り

2009.9.21

Makino Botanical Garden News
コオロギラン


コオロギランを高知の横倉山で発見

牧野博士が新種として世界に発表

学名に「四国」を入れてシコキアヌスとする

夏井 操

■米粒のようなラン
 暑さをあおるような蝉の声が涼を呼ぶ虫の音に変わり、季節の移ろいを感じる8月末、高知県越知町、横倉山(793m)に行ってきました。


コオロギラン

■横倉山特有の植物
 横倉山は、大陸移動により赤道あたりにあったサンゴ礁が4億年かけて現在の位置に移動し、隆起した山といわれており、地質を構成する岩石も石灰岩、蛇紋岩や花崗岩などさまざまです。
 おかげでそれらの地質に適応したさまざまな種類の草木が見られるうえに、横倉山特有の植物も多数あります。横倉山は牧野富太郎が幼いころ足を運んだ山。なるほど、植物学者の探究心をくすぐる山です。


ダイサギソウ

■ロシアの植物学者に送る
 横倉山で牧野は、それまでに見たことのないランを1889年に発見しています。当初、牧野はその標本をとり、図を添えてロシアの植物学者マキシモヴィッチに送り、植物の種類を調べてもらいました。
 その結果、新属・新種と判り、マキシモヴィッチは、スティグマトダクティルス・シコキアヌスと、種小名に“四国”を冠する新学名を用意しました。
 しかし、発表を前にマキシモヴィッチは他界してしまいます。1890年、牧野はマキシモヴィッチから授かった新学名を発表し、さらにその翌年、「コオロギラン」と新和名を発表したのでした。


ヒガンバナ

■石版画に水彩で着色
 牧野はマキシモヴィッチに送った図をもとに、学術発表するための図を完成させており、さらにその石版画に水彩で着色した図が牧野植物園に収蔵されています。堂々とした図で、わたしも「本当にこんな花があるのなら見てみたい」と、実物に出会うのをとても楽しみにしていました。
 実際に横倉山で見たコオロギランは草丈4cmほど。つまようじのほうがまだ大きいかもしれません。その先に米粒のような花。拍子抜けしました。帰宅して牧野の図をもう一度見ると、図の左隅に、全草の様子が描いてあるではありませんか。
 「…これか!」。
 山で見たその花はまるで、杉林の中で、ぽつんとうずくまってているコオロギのようではありませんか。いや、もっと小さいかも。
こんなに小さなランを、牧野はどうやって見つけたのでしょう。植物学者の探究心ははかり知れません。

■見ごろを迎えています
 園内では秋の草花が見ごろです。


シロバナマンジュシャゲ


ナリヤラン


オミナエシ

▼インフォメーション

■10月3日(土)〜2010年1月11日(月・祝)
植物画巡回展『日本の帰化植物図譜』出版記念
帰化植物画展
11月21日(土)13:30−15:00
基調講演 「海を渡って来た植物−帰化植物の正体をさぐる」
講師:高知県立牧野植物園 園長 小山鐵夫、研究員 前田綾子


高知県立牧野植物園

 牧野植物園は、高知県が生んだ植物学者・牧野富太郎博士の業績を顕彰する施設として、昭和33年(1958)に、高知市五台山に開園した施設です。平成11年11月には「牧野富太郎記念館」が開館しています。
 園内には博士を生む土壌となった高知県の植物を中心に、博士ゆかりの植物など約3,000種が四季を彩られています。
 また、植物園機能とあわせて、貴重な資料を紹介する展示、研究、生涯学習の場を提供する施設などを収めた博物館が同居する総合施設は、国内では他に例がないと思われます。さらに、景観に配慮した環境保全型建築の方向性を示す優れた建築物として全国的な評価を受け、第13回村野藤吾賞をはじめ数々の賞を受けています。

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