【食の庭】食道楽
2010. 2. 8

Enjoy four seasons with fine food


脳のメカニズムに必要な
栄養がいっぱい

世界が涎をだす「マグロ」

金関 亜紀    
 


世界の海を回遊するマグロ。時速100キロで回遊する姿は圧巻。


 私達、日本人が大好きな魚『マグロ』。子供から大人まで「マグロ大好き!」 という人は多いと思いますが、さてそのマグロをどのくらいご存じでしょうか。

■時速100kmを超える速さ

  マグロはサバ科の大型回遊魚で世界中の熱帯から温帯の海に分布しています。 本マグロとよばれるマグロは台湾近海で生まれ、イワシやイカなどを食べて急速に大きく成長し、 日本近海で1年ほど過ごしてから北回りで太平洋を周回しています。
  この本マグロの他にメバチ、キハダ、ビンナガ(ビンチョウ)、ミナミマグロの5種類が現在、マグロとして知られています。 つい最近公開された映画『OCEANS』ではキハダの群れが紹介されていました。流線形のスマートな体型をしていて、非常に速い速度で泳ぐ姿は海の弾丸ともよばれ、なんと最高速度は時速100キロメートルを超えるとか。
  「おいしい」と喜んで食べているマグロのおいしさにはどうもこのスピードにも秘密があるようです。 ここ最近はその「おいしさ」を世界中のグルメが知ってしまい、マグロ合戦となっているようで、ついにWHO から本マグロなどの漁獲規制がかかってしまいました。私達日本人があたりまえのように食べていたマグロの世界もどんどん変化しているようです。世界が涎をだして欲しがるマグロ。
  そんなマグロをしっかり知っていただくことが、これからは必要なのかもしれません。


■トロもいいが赤身がおすすめ!


美しいさしのはいったマグロ。特上の肉に匹敵する美味は一度食べると忘れられない。

  鮮やかな赤。かぐわしい赤身の香りにとろける脂はまさに刺し身の王様。獲れたてのいただくと魚というよりも高級なお肉という食感は、世界中の食通をうならせます。
  一年中マグロが魚屋やマーケットに並んでいるのでマグロの旬というものを私達は忘れがちですが、日本近海物の旬は10月〜1月にかけて。でも最近では2月中頃にかけて旬といわれるようになりました。世界的な健康志向の影響で 漁獲の減っている近海物の本マグロは非常に高価になってしまいました。
  高価な本マグロというと代表的なのが大間のマグロ。テレビでも特番が組まれるくらいの人気ぶりです。 そもそもマグロは子供の頃から大人になるまで名前が変わるのをご存じでしょうか。性格には大きさ(kg)によるのですが、生後1年ぐらいの20kg以下の時はメジ、2年から5年ぐらい、 20kgから40kgのものを中房、それ以上の大きさのものをマグロと呼ぶのです。
  マグロは 最大で3メートル、重さは600kg以上になります。特に大きなマグロをシビと呼ぶことがありますが、 これは熟成に4日かかるという意味があるようです。とはいえ、私達が「最高!」といって食べるに適しているのは200kg以下のもので、肉も柔らかく美味。 魚とは思えない理由はマグロの赤身の色合いや脂のさしの入りが牛に似ているからともいわれています。

■牛肉の栄養と同じ部分も
  見た目だけではありません。マグロは栄養的にも牛肉のもつ栄養と同じ部分もあるのです。総脂肪量が多く、 たんぱく質・脂質・ビタミンを豊富。 しかも部位によって含まれる栄養が異なるのです。たとえば、赤身にはタンパク質と鉄、血合いには鉄、ビタミンE、タウリンが多く含まれています。 また、トロにはエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)があり、魚のなかでもトップクラスにはいります。
  そのため、調理法も様々です。 刺身に串、アラ煮、ズケ、焼き、たたきなど、どんどんでてきます。どんな居酒屋へでかけても「マグロ料理」だけは王道に存在しているのです。活きのいいものをいただくのはそのまま生、刺身は一番ですが、一番の贅沢は中落ち部分。 どんな食材でも一番栄養があり、旨みがあるのが皮や骨(芯)に近い部分です。その部分の中落ちにある赤身は脂質も少なく、ヘルシーでありながら鉄分は他の部位よりも高いため、ダイエットに敏感な女性や成人病などに注意をしている人は好みます。
  中落ち、贅沢な食べ方は骨付きであること。 骨付き中落ちがあるのなら、絶対に注文すべきです。骨付きとなると1匹で4〜6人分しかとれないという稀少さで、スプーンなどで自ら身をほじくることができる余興も楽しめます。骨の隙間にぎっしりうまる赤身にスプーンを差し込み、サクサクともりあがる赤身のウェーブは食欲にさらなるおいしさのスパイスをかけてくれます。


骨付きの中落ち部分はマグロ1匹からとれるのも少なく稀少。すくって食べる楽しさはマグロ料理のうまさの醍醐味!


■良質のタンパク質で脳を活性化  

  さて、マグロの栄養のなかで一番注目したいのはタンパク質です。マグロのタンパク質は良質で、必須アミノ酸のメチオニンを多く含みます。メチオニンは食品中に不足しやすいアミノ酸で脂肪肝を防ぐ効果があるのです。
  そのほかにも必須微量元素のセレンも含まれ、セレンは脂肪の酸化を防ぐ一方、ビタミンEと共同で過酸化脂質を分解する働きがあります。
  過酸化脂質や酸化は加齢が進むつれて、肉体をむしばんでくる元凶。この元凶を抑制、防いでくれるという良質のタンパク質は栄養サプリメントより効果は高いのは間違いありません。
  そして、有名なのが、マグロの栄養素のうちのEPAとDHA。EPAとDHAは、αリノレン酸からプロスタグランジンが合成される際の中間体。中性脂肪とコレステロールを減らして血液の粘度を下げるため、血栓を予防する働きがあります。
  この働きにより脳梗塞や心筋梗塞を防げるだけではなく、脳血管障害が原因で起こる認知症の予防や治療にも有効だといわれているのです。
  また、受験生に必要な脳細胞を活性化させる働きがDHAにはあります。DHAが脳に補給されると、脳神経の突起の伸びが促進され、脳細胞間の情報伝達 がスムーズになるという検査結果も多くでてくるようになりました。そのDHAを最も多く含むのはマグロの目窩の脂肪なのです。
  マグロのカマがあり、カマ焼きがあれば、少々高くてもいただくべきだと思います。とはいえ、体にいいからとマグロづくしで毎日過ごすというのはNG。眼窩の脂肪やトロにはビタミンDが多く含まれているので、過食すると食欲不振や吐き気、体重減少などの過剰症になることも。
  トロ1切れには100IUのビタミンDが含まれており、人間の1日の所要量はこの1切れで満たされるということを覚えておいてください。美味しいものも食べ過ぎると毒に……。


ねぎま。じっくり炭でやきあげる串焼きもマグロのおいしい食べ方のひとつ。ネギの甘さがマグロをささえてくれるので、ビールのアテ(つまみ)にいい。



金関 亜紀
(かねせき・あき)
 1974年、香川県生まれ。九州や山口で考古学に携わり、民俗学などに関心をもつ。東京の編集プロダクションや出版社勤務を経て、フリーランスに。現在、東京−香川を往復する生活を続ける。一年に地方や離島に出かける回数は30回以上。土地の食材や酒、祭りなどのフィールドワークを行っている。共著に「日本全国うまい焼酎虎の巻」(エイ文庫)がある。無類の酒好き。雑誌やネットなどでお酒のコラムをはじめ、離島の島ネタなどを執筆中。現在は各地の居酒屋で旬の食材と地酒を求めて放浪中。

 

 
 


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