【食の庭】食道楽
2009. 6. 8

Enjoy four seasons with fine food

vol.10 アスパラガス

2000年前から食されてきた

滋養強壮100%

旬はケタ違いのおいしさです

金関 亜紀
 

サラダに定番のグリーンアスパラ。
実は緑だけじゃなく、白いアスパラがあるのは知っていますか?
え?知っている?じゃあ、紫アスパラはどうですか?
まだまだ奥深いアスパラ世界は旨みも食感も旬の時期はケタ違いのおいしさ。
これは食べるしかありません。


美味しいアスパラの見分け方は、先端の開いていないものをチョイスすること。新しくて甘みがある。そして鮮度が味の決め手。緑が鮮やかであり、切り口が新鮮で張りのあるものがよい。

■観賞用で輸入されていた
 新緑のさわやかな季節に呼応するように八百屋の軒先では太めのみどり色のみずみずしいグリーンアスパラガスを見かけるようになります。夜の居酒屋のメニューに乗り、「このしゃきしゃき感がたまらない」とアスパラガスを注文する客も増えてきます。
 旬のアスパラガスはやわらかく甘みがあり、生産地の畑では、その場で食べることができるとか。細いタケノコのように地面を押しのけて、次々と生えてくるアスパラガス。
 元気よく延びる秘密は根にある細い芋のような貯蔵根。その根に蓄えた栄養で、ひとつの株から若い芽がどんどんと生えてきます。このときのアスパラガスはまだ、私たちが口にするアスパラガスの形ではなく、かすみ草のような細い形状。どんどん葉を茂らせることで再び根の方に栄養分が溜まるように成長させ、翌年の収穫となるのです。


収穫年数は意外と長く、種をまいて2〜3年後から10年以上も収穫できる。

 そもそもアスパラガスというのはギリシャ語であって、「たくさん分かれる」、「激しく裂ける」というのが語源で、新芽という意味があります。
 アスパラガスの原産国は南ヨーロッパからウクライナといわれ、古代ギリシャ時代の文献にも栽培されていた記録が残っています。ユリ科の多年草で、日本に伝来したのは江戸時代。鎖国時代でありながら、輸出入が許されていたオランダ人によってもたらされました。
 当初は細い茎や葉を楽しむ観賞用でしたが、大正時代にはいり食用に、北海道で栽培を始めた。その後、主な生産地として北海道を中心に、福島、長野と生産地が広がったそうです。
 今は一年中出回っているアスパラガスですが、国内では群馬産が年初から出回りはじめ、その後長野→福島→北海道と秋まで続きます。国内産が減る秋から真冬になるとオーストラリアやメキシコ、アメリカから輸入されています。
 つまり1年中、私たちはアスパラガスを食べられる環境となっていますが、一番美味しいといわれているのが、国産が出回る5月出荷ものなのです。


アスパラガスには雄株と雌株があり、雄株のほうが茎の太さが適当で穂先がよく締まったものが収穫できる。

■天然のリポビタンD!で毎日健康。
 旬のアスパラガスは野菜のリポビタンDといわれるように、カロチン(ビタミンA)が多く含まれ、病気に対する抵抗力を高める効果があります。
 主成分はアミノ酸の一種であるアスパラギン酸で、新陳代謝を促すとともに、タンパク質合成を高める効果があり、滋養強壮や疲労回復、ダイエットに効果抜群です。
 この栄養効能ははるか2000年前から知られていたようで、肉体労働者の疲労をすぐに回復させるため、食用として供給されてきました。


どんな料理でも相性のいいアスパラガス。色目も鮮やかで食感もいいので、食べる満足感もピカイチ!

 天然素材のリポビタンDの穂先部分にはルチンという成分が含まれており、血管を丈夫にし、高血圧や動脈硬化の予防になります。
 さらにカロチン、ビタミンE、ビタミンCを同時に摂取することができるため、抗酸化作用が高く、体の老化防止、ガンの抑制、そして美容にも効果があります。そして、なんといっても人間の赤血球をつくるために必要な葉酸を多く含んでいて、貧血気味の人や妊娠中の人にとっては見逃せない食材でもあるのです。女性にとっては必要不可欠な野菜といえますね。

■大人気のホワイトアスパラを押さえて堂々1位!
 幻の紫アスパラは食べるしかない!

 アスパラガスというとグリーンアスパラが主流ですが、5月中旬になると北海道産のホワイトアスパラの旬がやってきます。


ホワイトアスパラの美白の秘密は……若い芽に光があたらないように盛り土をし光合成を避けるため。

 グリーンアスパラと比べて、出回る量はぐっと少ない。グリーンもホワイトアスパラも本来同種のものですが、栽培方法の違いで皮の色が異なります。日光を受けて育つグリーンアスパラは、人間が日焼けするのと同じでクロロフィルによって茎の色が緑色になり、一方ホワイトアスパラは、土を盛って育て、直射日光を浴びないように栽培するため、白い色となるのです。
 特有の甘さとほろ苦さ、口に入れたときに広がる優しい香り……。その個性を楽しみにホワイトアスパラの旬の時期を待ちわびる人も少なくありません。


アスパラガスの色によって栄養も異なる。一番、栄養価が高いのはグリーンアスパラガス。カロテン、ビタミンC、E、Bが多い。紫アスパラガスには、アントシアンニンという成分が含まれ、抗酸化作用があるといわれている。

 そのホワイトアスパラをおさえて、最近、人気が急上昇なのが紫アスパラ。この紫アスパラは最高級野菜といわれ、ホワイトアスパラよりも甘みが深く、北海道でも生産している農家はまだ少ない! この紫アスパラのシャキシャキとした食感とみずみずしい旨みは、一度食べると忘れない味なのです。


収量が少ない紫色のアスパラガス。根元も柔らかく甘い味で、生で食べてもおいしい。加熱すると紫色が消えてしまう。色を楽しむなら、薄く斜め輪切りにスライスしサラダに。

 「これは炒めても美味しいけれど、生が一番。茹でてもいけるよ」と居酒屋で出してくれたのがおひたし。かつおぶしをふりかけてそのまま食べるシンプルな調理ですが、口にいれる前の甘い香りだけでもかなりの満腹状態。しゃきしゃきとかみしめるほど、季節の旨みがじゅわっと吹き出てきて止まりません。茹でるだけでなく、タケノコのように網で焼いて香ばしく食べるのもまたいいものです。
 一年中、いつでも食べられるアスパラガス。どんな料理にも相性のいい野菜で、大人気の食材。身近な野菜だからこそ、ホワイトアスパラや紫アスパラなどの季節もんのやわらかさと甘味を知らずして、本当のアスパラの旨みを知っているというのはまだまだ青臭い……と思えてしまいます。まさに今からが旬の時期。栄養満点のアスパラガスを食べ、暑い夏に備えておきましょう!



金関 亜紀
(かねせき・あき)
 1974年、香川県生まれ。九州や山口で考古学に携わり、民俗学などに関心をもつ。東京の編集プロダクションや出版社勤務を経て、フリーランスに。現在、東京−香川を往復する生活を続ける。一年に地方や離島に出かける回数は30回以上。土地の食材や酒、祭りなどのフィールドワークを行っている。共著に「日本全国うまい焼酎虎の巻」(エイ文庫)がある。無類の酒好き。雑誌やネットなどでお酒のコラムをはじめ、離島の島ネタなどを執筆中。現在は各地の居酒屋で旬の食材と地酒を求めて放浪中。

 

 
 


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