【食の庭】食道楽
2009. 4. 6

昔から日本人に愛されてきた
「はまぐり」は縁起物

肝機能を高めるタウリンを多く含む
潮汁にして食べると最高です

煮てよし、焼いてよし、蒸しても美味しい、
栄養の宝庫は現代病予防にぴったり。

金関 亜紀
 

 春は曙といいますが、各地の桜もほころび、八分咲き、今が満開という場所もちらほら。華やかな色合いが楽しめる時期となりました。太陽の光があたる日だまりはポカポカしていて気持ちがいいですね。いまは、とっても気分が明るくなる素晴らしいときです。
 昼夜問わず、いい感じの人達は桜の木の下に集合しております。そんな春だからこそ、食べておきたい食材!ありますよね。そう!「はまぐり」です。


お吸い物:ひな祭りの定番といえばお吸い物。上品な汁にぷっくりしたハマグリが浮かぶお吸い物。汁にはハマグリの優れた栄養が溶け出しているので、一滴も残さないことが肝心!


◆調理簡単!沸騰前にサッとすくうのがうまさのコツ♪

 「はまぐり」というと三月三日のひなまつり!の食べ物という印象が強いですね。代表的なのが「はまぐりの潮汁」。おめでたい料理といわれ、短時間で簡単に作れるのがいい。だから料理が苦手な人でも簡単に作れる人気メニューです。
 はまぐりを煮た汁に、ヤマサの昆布つゆ白だしなど、昆布のうまみを含んだ市販の昆布だし入りの白だしつゆを加えたら風味も完璧。もちろん、めんどうでもアクは丁寧にすくい、はまぐりの口が開いたら、すぐに取り出すのがおいしく調理するコツだよ!と知り合いの板さんに教えていただきました。
 はまぐりは煮すぎると身が硬くなってしまうので、加熱しすぎは注意なんです。ここ、ポイントです。そんなはまぐりのうまみが汁にたっぷり!とけだした「はまぐりの潮汁」は栄養価も高く、健康を考えている私たちにとって、「はまぐり」はかなりありがたい食材です。

はまぐりの調理:煮ても焼いても、お鍋、バター焼、酒蒸し等々、どんな料理にでも使える「ハマグリ」。現場の漁師さんが一番ハマグリでおすすめするところは身よりも殻に残る体液だとか。だから殻ごと調理する料理が一番だそうです。殻ごと火にかける焼ハマグリのハマグリの出汁。こぼすと旨さは半分損してます。

◆貧血防止!肥満解消! B12を多く含む貝パワー

 「はまぐり」の栄養といえば、低脂肪でコレステロールが少ないことで有名です。血圧やコレステロールを下げ、肝機能を高め解毒作用を促進する働きのあるタウリンを多く含んでいるため、生活習慣病の予防に効果があるといわれています。
 さらに、粘膜を保護するビタミンB2やヘモグロビンを増加させ貧血の予防になるビタミンB12や鉄、骨や歯の発育を促進させ骨粗鬆症の予防になるカルシウム、味覚障害を予防する亜鉛なども多く含まれています。
 なかでもビタミンB12 は葉酸と共に悪性貧血を防ぐのです。神経細胞内の核質やたんぱく質を合成、修復する力もあります。つまり今注目されているビタミン群なのです。 このビタミンB12は「はまぐり」など貝類に多く含まれているので、同じ二枚貝の「あさり」やしじみ」「しゃこ」などで摂取することができます。このような栄養価抜群の「はまぐり」は貧血予防、肥満防止、生活習慣病対策、免疫力アップなど現代病防止としての最適な食材なのです。

ハマグリのブランドで有名なのは三重県「桑名のはまぐり」。漁獲量の多い産地は、茨城県。次いで千葉、熊本、大分の順。これらのハマグリはどれも朝鮮蛤です。

◆デリケートでありながら、瞬発力は超人クラス!

 では、「はまぐり」はいつ頃から食されていたのでしょうか。「はまぐり」という名称の由来は、砂浜に棲み、栗に似ていることからその名がついたといわれる「はまぐり」=「浜栗」。
 他の一説には「浜小石」。「ぐり」とは小石のことで、砂浜の小石ほどたくさん採れるからという説もあります。その歴史は古く、縄文時代から食用とされていました。縄文時代の人の食がわかる貝塚にある殻の80%は「はまぐり」の殻です。
 また「はまぐり」の貝殻は一度外すと他の殻とは合わないことから、中世以降、縁を結ぶ結婚式や正月など祝宴の縁起物として、日本の食文化に深く溶け込んできました。そういえば、「はまぐり」の漢字は「蛤」。大蛤は「蜃」と書きます。
 これは中国において、大ハマグ(蜃)の吐く気によって海上に楼閣が現れると信じられていた為。ちなみに蜃気楼は大蜃の仕業であると思われていたとか。蜃気楼が春先に多いのも「はまぐり」は春のものだといえる理由のひとつといえますね。
 さらにひな祭りの食事のメニューででてくるのも縁起物としての意味です。そんな「はまぐり」も昔は各地の内湾でたくさん獲れていました。が、最近では埋め立てや水質の悪化などで生産量はかなり激減。国内で供給される約9割は輸入品に頼っているのが現状だそうです。しかも年々大きさは小さくなり、いつの頃からか「はまぐり」は高級食材の仲間入り。大粒でたっぷりした肉厚の身の「はまぐり」は沿岸漁船による網漁。水揚げする場所も期間が定められており、1人の漁師が操業できるのは年間10日程度、1回わずか1時間までという厳しい制限がかけられているのです。
 「ハマグリ」は環境の変化・水質汚染には弱い貝です。しかし、その分、ハマグリはアサリやシジミにはない能力があり、なんと海中を素早く移動できる能力があるそうです。「ハマグリ」は1〜3mにも及ぶ粘液の紐を分泌、これを使って移動。潮の干満を利用すると、その分速は1mに達するとか。「ハマグリは一夜に三里走る」という言い伝えも、まんざら大げさではないようです。数も少なく、逃げ足も速い「はまぐり」。こうなったら、是が非でも食べておきたい春の海の幸。春は曙……は春はハマグリ!と叫びたくなります。

◆歴史の表舞台にでてくる「はまぐり」

 京都御所には蛤御門(はまぐりごもん)と呼ばれる門があります。幕末の1864年、長州藩が薩摩・会津連合と戦って破れた戦を「蛤御門の変」と呼び、歴史の教科書にも登場しますね。元来はこの門は新在家御門と呼ばれ常に閉ざされていました。それが1708年の「宝永の大火」の際に初めて開門されたことから「焼けて口開く蛤御門」と言われ、その後、蛤御門と呼ばれるようになりました。日本の大事な歴史舞台にも登場する「ハマグリ」は本当に日本文化に根ざした食材なんですね。

貝合わせ:源氏物語にも出てくる昔の貴族たちの遊びの一つ。貝殻の内側2枚1組の絵や文字が描かれた蛤を片方を伏せて、それに合うもう片方を探し当てるという日本版トランプ。「貝合わせ」が江戸時代に「歌貝」という遊びにかわり、百人一首の原形になったといわれている。


金関 亜紀(かねせき・あき)

1974年、香川県生まれ。
九州や山口で考古学に携わり、民俗学などに関心をもつ。東京の編集プロダクションや出版社勤務を経て、フリーランスに。現在、東京−香川を往復する生活を続ける。一年に地方や離島に出かける回数は30回以上。土地の食材や酒、祭りなどのフィールドワークを行っている。共著に「日本全国うまい焼酎虎の巻」(エイ文庫)がある。無類の酒好き。雑誌やネットなどでお酒のコラムをはじめ、離島の島ネタなどを執筆中。現在は各地の居酒屋で旬の食材と地酒を求めて放浪中。

 
 


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