【食の庭】食道楽
20089.01.13

Vol. 4 クエ(アラ)
高いけど、
食べてみたい高級魚


栄養満点かつコラーゲンたっぷり!
アンチエイジング食材として大注目!

 
金関 亜紀

 新年あけて、一番贅沢な海の食材というと! 誰もが口にするのが「クエ」。幻の魚といわれ、高級料亭でも、なかなか仕入れることができないといわれるこの魚。一体全体どんな魚なのでしょうか。噂だけしか聞いたことのなかった「クエ」について、今回チャレンジしてみました。

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良質な脂が皮下から、身の間にそって深部まで万遍なくのっています。マス(愛知)、クエマス(三重)、アオナ(四国)という呼び名もあります。

◆アンコウやフグに勝る! 冬海の王様

 鍋やおでんが恋しい冬。連夜、居酒屋では鍋メニューのオーダーが繰り返されています。鍋といえば、お好みの素材は十人十色。毛色の違う「闇鍋」というものさえ存在するのですから、日本人の鍋好きは半端じゃありません。
 そんな鍋でも誰もが一目おいているのが「クエ鍋」。西日本では「クエ」、東日本では「モロコ」、九州では「アラ」と呼ばれているスズキ目ハタ科の海水魚です。なかでも九州や四国は昔より、九絵(クエ)の宝庫と言われているほど大ぶりの「クエ」があがるといわれる地。
  「クエ」という名の由来は体側にある縞模様。これを時とともに変化させ体に九つの絵を描き出すと言われる所から来ています。

 もともと、潮の速い岩場に棲み、主に魚類や伊勢海老等の甲殻類を捕食します。高級食材、伊勢海老を食べるなんて……。エサのえり好みはかなり高い魚なのです。このクエは専門の漁師がいるほど、捕まえるにはかなりのテクニックがいるようで、名人でさえ、一月に何本も捕れない事もあるとか。
 そのため、今日では「幻の魚」とさえ呼ばれる様になりました。そんな「クエ」の中でも最も美味とされるのが天然の「真クエ」。重さが大体15キロ以上のものは海の宝石といわれるくらい、めったにあがるものではありません。

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 このクエを大きくブツ切りにした切身は熱を加えると身がギュッと締まり、脂たっぷり。刺身で食べるといささか淡白で、味気なし。しかし、燻ったり揚げたりすると、途端に味はジューシー。歯応えも十分で、鶏のような食感で脂ののり具合とのバランスは他の魚では例え難い美味しさで、アンコウやふぐに勝る旨みがあります。

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クエの切り身

  「クエ」が漁港に水揚げされるようになり、食べ頃といわれるのは秋口ですが、実は最も脂がのるのが年明け。つまり! 1月の今なのです。年を越した「クエ」は大きさもよく、コクも増しています。
 1月にはいりと「初鍋はクエ」というファンも多くなるようで、市場などにはそんなファンの期待に応えようと、数多くの飲食店が競り落とそうと熱がはいっているそうです。

◆一度食べたら、他の魚はクエん!

 さて、数多くの美食家をうならせる、「クエ」の料理とはどのようなものがあるのでしょうか。高級魚である「クエ」を食べる場合、大体はコース仕立てになっています。店舗ごとに弱冠内容は異なりますが、大筋には次のようなものが用意されます。
 ・クエ酒
 ・お刺身
 ・お吸い物
 ・揚げ物
 ・焼き物
 ・湯引き
 ・鍋

 そのなかで一番旨い!といわれているのが鍋。大相撲九州場所でお相撲さんに喰わせる超高級料理「アラの一本炊き」とはクエを大鍋で炊いた料理なのです。

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アラ

 フグよりも美味しいと賞されるその味は、「クエを食ったらほかの魚はくえん」と漁師たちをも唸らせるほどなのです。
 特に体長が1メートルを超える巨大魚になると、味の旨さ、脂のよさはもちろん、身もしっかりしているので食べ応えは十分。骨や内臓などで出汁をとり、豪快にクエのぶつ切りを鍋に投入。刺身でもいけそうな鮮度なので、味は保証付き。程よく煮たった鍋に入れるとみるみるうちにクエの身はギュ〜と締まって表面が盛り上がります。
 身が締まったことで白身魚独特のやさしい旨みがぎっしりと身のなかに閉じこめられています。後味も良く、高級魚といわれるだけのことはあります。

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漁獲量が少なく、貴重なクエ。そんなクエを味わうならなんと言ってもクエ鍋。海水温の降下とともに旬を迎えると特に脂ののりが増し熱を加えると身がギュッと締まる!

 そして、鍋を堪能した後は……雑炊&うどん。「クエ」のあらゆる部位から染みだした旨みの出汁に白米をいれ、待つこと数分。鍋蓋から白い湯気がチョロチョロと吹き出したら完成です。とろみを感じるクエ雑炊は良質の脂が溶け出し、肌にハリと潤いをもたらしてくれるコラーゲンたっぷり。
 栄養価も高く、アンチエイジング効果もあります。あっさりとしたなかにも旨みの凝縮された最高のだしの雑炊は「クエ」という魚料理の最骨頂。クエ鍋を満喫した人しか味わえない、至福の食材といえるはずです。

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クエ雑炊


◆意外と人見知りでおっちょこちょい

 普段、「クエ」は深海で生活しています。黒潮の恵みたっぷりの栄養豊富な餌を好みますが、実は「クエ」は恥ずかしがり屋さんでもあるのです。夏の間はほとんど深海で生活しているのですが、冬が近づくと陸近くの水温が低いときにあがってくるという習性をもち、この習性を活かして、クエ漁が行われるのです。
 とはいえ、漁は夜がメイン。昼間は岩場にじっと潜んでおり、まったく動くことはありません。が、夜になると銀座の帝王と呼ばれるほど、活発に活動をはじめます。


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クエの刺身

 さらに漁獲が困難な理由に「クエ」は1〜2週間に一度しかエサを食べないともいわれており、エサをとるのもかなり下手だとか。図体デカイぶん、動きものろく、住処の岩の穴から自分の上を通り過ぎる魚を狙って、一気にジャンプし、大きく口をあけて海水ごとエサを丸ごと飲み込むそうです。
 でも大概は一気に飲み込めず、もう一度口を開けて頭から魚を飲み込み直すとか。エサは必ず頭から飲み込むのでかなりの時間がかかり餌を飲み込み終わるといきなり、我に返り、大あわてで自分の巣穴に逃げ帰るそうです。
 図体が大きくても、肝はかなり小さいのが「クエ」なのでしょう。この逃げ帰るときのパワーは半端なものでなく、「クエ」版、火事場のくそ力といってもいいくらいのかなりの引き。一本釣りであげる名人も毎回、この力に手を焼いています。

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クエの焼き物

 この臆病でおっちょこちょいの性格をもつ高級魚「クエ」。真クエだと一匹30万近くなるという価格も納得してしまいますね。「クエ」が食べたくても、高いから無理と断念する人も少なくありませんが、そんな人に朗報なのが、養殖クエの存在。和歌山県南紀白浜にある近畿大水産研究所ではずいぶん前より研究&養殖がおこなわれており、昨年の冬には味の面から「天然のクエにも引けをとらない」ということで関西方面を中心に本格供給が始まっています。

 若干、小ぶりですが、味は濃厚で脂たっぷり。天然より脂を強く感じる部分もあり、大満足です。この「クエ」、正しくはクエ×ハタ交雑種。5〜6年の間育て、4〜5キロになったときに出荷されています。
  『美味しい「クエ」をリーズナブルで食べられる!』という噂はまたたく間に全国に広がり、南紀白浜の旅館やホテルには各地のクエファンが訪れているそうです。さ、皆さんは今が一番旨い! 「クエ」をどこでいただきますか?天然を口にできたら超ラッキー。お財布考えて養殖を食べても満足できる、冬海の王様「クエ」は今が食べ頃です。



金関 亜紀(かねせき・あき)
1974年、香川県生まれ。
 九州や山口で考古学に携わり、民俗学などに関心をもつ。東京の編集プロダクションや出版社勤務を経て、フリーランスに。現在、東京−香川を往復する生活を続ける。一年に地方や離島に出かける回数は30回以上。土地の食材や酒、祭りなどのフィールドワークを行っている。共著に「日本全国うまい焼酎虎の巻」(エイ文庫)がある、無類の酒好き。雑誌やネットなどでお酒のコラムをはじめ、離島の島ネタなどを執筆中。
 
 
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