【食の庭】食道楽
2008.12.08

Vol. 3 牡蛎
栄養バランス満点の牡蠣は
自然界の万能薬


成人病に効果あり?

 
金関 亜紀

 冬が来たら・・・「牡蠣食べたい!」と声高に叫ぶオヤジ殿が多い居酒屋。あのクリーミな牡蠣。実は食感と旨みだけが牡蠣の良さじゃないということを知って、注文している人は何人いらっしゃるのでしょうか。牡蠣は中身も殻も全て利用できる! 捨てるところのない百点満点の食材なのです。

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生牡蠣


◆健康成分満載の牡蠣で現代病は克服される?

 日本には各地それぞれに美味しい地元の「牡蠣」を収穫できるスポットがあります。代表的なのは北海道、三陸、秋田、石川、広島、香川、長崎 etc…。大きさに多少の違いはあれど、「牡蠣」独特の濃厚なミルキーさはどこも絶品です。
 そんな「牡蠣」をつかった料理といえば、生牡蠣を筆頭に牡蠣に衣をつけて揚げた牡蠣フライや酢ぬた、牡蠣みそ焼き、牡蠣のスモークに牡蠣ご飯などたくさんあり、「牡蠣」シーズンになると初めから最後まで牡蠣フルコースというのもあたりまえ。 牡蠣を噛んだときに磯の香りが口の中に拡がる。その風味が日本人の味覚にマッチしているのです。そんな「牡蠣」は海のミルクといわれ、栄養成分も幅広いのはご存知のとおり。

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牡蠣フライ


 良質なたんぱく源で、消化吸収のよいエネルギー源であるグリコーゲンにも富むことから、幼児や老人、病後の人の滋養に用いられます。さらに鉄、ビタミンB1・ビタミンB2も多く、とくに鉄は100gあたり3.6mg含み、卵の2倍。まさに貧血予防に最適なのです。一時、コレステロールが多いから、成人病や糖尿病、高血圧の人はご遠慮を、という時期がありましたが、これはその測定法の間違いでした。
 むしろ「牡蠣」はコレステロールが少なく、逆に血圧を正常値に保つタウリンを多く含んでいることから血栓予防や心臓の興奮などを静めてくれる効果が高いのです。まさに世の中にはびこる現代病を和らげてくれる魔法の食材といっても過言ではありません。

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牡蠣飯


◆牡蠣の殻は漢方薬!

 そんな「牡蠣」。実は肉だけでなく、殻にも利用価値が高いのです。え? 海にいったらいっぱい殻の山積みを見るよ! という方。その殻。実は宝モノだったのです。東洋医学の漢方で使う牡蠣(ぼれい)と呼ばれるものが実は「牡蠣」の殻なのです。 そもそも雌雄同体の貝殻をどうして「牡蠣」というのか、不思議なのですが、牡蠣(ぼれい)は殻の塩分を十分洗い流した蛎殻を高温で熱し付着物や汚れを消却したあと、粉砕機できれいな小さな粒にして生薬として、利用します。
 殻ですから主成分は当然カルシウム。鶏のエサなどにもよく混ぜられてもいます。その牡蠣(ぼれい)を人がその煎じ液として服用すれば制酸作用で胃腸がよくなる。また安神作用といって精神安定作用も強い。肺結核の盗汗=寝汗に用いられることもあります。
 とはいえ、素人技で作りだせるものではないので、やはり殻の山は減らないかもしれませんね。

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牡蠣の殻&養殖場


◆牡蠣のシーズンはいつ?

 「牡蠣」のシーズンというと冬から春というのが有名です。これは欧米では昔からRのつく月、9月から4月までしか食べないと昔からいわれていること。そのわけは3月から8月頃の「牡蠣」は産卵期で栄養価が落ち、また中毒しやすい時期でもあるため、先人の智恵として伝承されてきたことだろうと思われます。
 夏の「牡蠣」は冬より肉厚で少し固く、風味は弱冠落ちているように感じられますが、チーズケーキのような甘みがある食感があり、その味を楽しむ人も多いですね。
 しかし、やはり「牡蠣」は冬。肉汁と磯の風味のバランスがよくとろーりとした口当たりに勝るものはありませんし、先人の知恵に間違いはないはずです。冬本番の今。各地の「牡蠣」を食べ比べ、味の違いを楽しんでみるのも、居酒屋食道楽の醍醐味でしょう。

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牡蠣鍋


◆牡蠣は天然濾過装置!

 「牡蠣」は天然ものが喜ばれますが、実は養殖も侮れません。しかもその養殖場って海水の濃度のバランスもよく、汚れなども少ないという事実を私達はあまり知りません。山口県にある水産大学校の生物生産学科には水圏の環境を学べる場所があり、そこでは牡蠣などの二枚貝の研究などが行われています。
 
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牡蠣の養殖場


 「牡蠣養殖場は水質が綺麗なんですよ。」

 牡蠣には濁水を濾過する行動があります。牡蠣など二枚貝の養殖を増やせば、水質は向上し、海洋汚染などは減少するはずです。牡蠣が天然濾過生物という事実。自然環境と上手に共存していかなくてはいけない私達人間にとって知っておかなくてはいけない情報です。
「牡蠣は汽水で育つ。美しい山と川と海があるところにうまき牡蠣あり」という牡蠣漁師の言葉は嘘ではありません。食べてよし、育ててよし、捨てることなしの「牡蠣」は、まさに自然界のスーパーマン。私達はそんな恩恵を毎夜、「美味しい」と叫びながらいただいております。

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生牡蠣



金関 亜紀(かねせき・あき)
1974年、香川県生まれ。
 九州や山口で考古学に携わり、民俗学などに関心をもつ。東京の編集プロダクションや出版社勤務を経て、フリーランスに。現在、東京−香川を往復する生活を続ける。一年に地方や離島に出かける回数は30回以上。土地の食材や酒、祭りなどのフィールドワークを行っている。共著に「日本全国うまい焼酎虎の巻」(エイ文庫)がある、無類の酒好き。雑誌やネットなどでお酒のコラムをはじめ、離島の島ネタなどを執筆中。
 
 
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