【食の庭】食道楽
2008.11.10

Vol. 2 ししゃも
今が食べどき!
旬のししゃもはトロより美味い♪

大衆魚といわれているが、実は高級魚

北海道産が、概念を変える
金関 亜紀

 居酒屋でおつまみというとおしんこ、きゅうりもみ、卵焼き……と続きますが10人中10人が注文するといっても過言ではないのが、『ししゃも』。頭からしっぽの先までまるかじりできる魚で、学校の給食にもよくでていた食材です。小さい頃はこんなちっちゃな魚! とバカにしていた時もありましたが、歳を重ねるほどに旨さがわかりはじめた今日この頃。そんな『ししゃも』の真の旨さはまさにこの時期。一度食べると忘れられない味の世界を是非、食べてみましょう。

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◆『ししゃも』という皮をかぶった偽物

ぷっくらお腹の小魚といえば『ししゃも』。馴染み深いししゃもは子供も大人も大好きな魚のひとつです。が、実は私達がよく食べている『ししゃも』、実は本当の『ししゃも』ではないということをご存じでしょうか。

 え!違うの? と驚かれた方。市場にでている大多数はロシア産の『カベリン』、『キュウリ魚』という魚です。『カベリン』の見た目は同じように見えます。が、学術的にも生態的にも『ししゃも』と大きな違いがあります。価格が安く外観や食感も似ています。
 しかし本物の風味にはとうていかないません。見た目もきちんと見るとかなり違う。『カベリン』の鱗はないように感じるくらい小さいのですが、『ししゃも』の鱗は、大きくはっきりとしています。鱗の色はしなやかな銀色をしていて、目が比較的小さいのが特徴です。しかもその鱗からは脂が滲みだしており、お腹は今にもはち切れんばかりの卵がぎっしり。

 見た目だけでもかなりの食欲をかき立てます。もちろん味も雲泥の差。脂ののった生ししゃもは柔らかく、しかも弾力抜群。癖もないので、子供でも食べやすい優しい味です。しかも雌と雄では味が異なり、雌は卵のあるせいか、身が甘いのですが、雄は身がキリリと締まり、濃厚な旨みがある。

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 好みによりますが、北海道ご当地では雄のほうに人気があるようです。一度でも北海道の本当の『ししゃも』に出会うと、偽物である『カベリン』はかなり貧相に見えてしまいます。本物の『ししゃも』の旬が10月〜11月半ば。ご当地では「ししゃもの生ずし」「ししゃもどんぶり」など、生で食べられる秋メニューが食べられるそうです。生ししゃもという旬の旨みはこの秋に堪能したい味のひとつ。居酒屋で『ししゃも』が食べたくなったら、道産の『生ししゃも』とぜひ注文してみてください。

〈ししゃも伝説〉
◆柳葉魚と表記される理由

 北海道にはししゃもの伝説もいくつか残っています。そのなかでも有名なのが『カンナカムイ』のお話しです。

 天の上に住むカンナカムイ*の妹は、兄弟の目を盗んでこっそり人間界に遊びにきました。そんな人間界の国にある沙流川と鵡川の水源地(北海道)であるシシリムカカムイヌプリに着いたとき、川下にあるコタン**の家々からは煙が立ちのぼっていません。
 不思議に思ったカンナカムイの妹は、人の姿に化けて村人に話しかけてみると「飢饉で食べるものがない。どうしよう」と、途方に暮れている声ばかりが聞こえてきたそうです。彼女はそんな人間界を助けようと、天に向かって大声で叫びだしました。

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 その声は天界まで届き、神の集落ではおおいに驚き、フクロウの女神が柳の枝を杖にし、魂を背負い地上に舞い降りてきました。持ってきた柳の枝をどの川に流そうかと神々が相談したところ「沙流川の水は綺麗だが、男川で気が荒いから女川の鵡川のほうがよいだろう」ということになったのです。神様に魂をいれられた柳の葉を鵡川に流すと、またたく間にススハム***になりました。
 やがてススハムは北海道の土地に広く棲息するようになり、どの家も食事の煙が絶えることはなくなったそうです。こうしてススハムは北海道を代表する土地の魚となりました。

注)カンナカムイ=雷神
  コタン=集落
  ススハム=柳の葉の魚=ししゃも



金関 亜紀(かねせき・あき)
1974年、香川県生まれ。
 九州や山口で考古学に携わり、民俗学などに関心をもつ。東京の編集プロダクションや出版社勤務を経て、フリーランスに。現在、東京−香川を往復する生活を続ける。一年に地方や離島に出かける回数は30回以上。土地の食材や酒、祭りなどのフィールドワークを行っている。共著に「日本全国うまい焼酎虎の巻」(エイ文庫)がある、無類の酒好き。雑誌やネットなどでお酒のコラムをはじめ、離島の島ネタなどを執筆中。
 
 
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