【食の庭】食道楽
2007.07.23
 
などがあって、結構いけます
 

 「岩手の食べ物を推薦してよ」。と友人に話したら、しばらく首をひねってから「やっぱりわんこそばかな」という。
 鮑のステーキが見事だったし、牡蠣やホヤ貝など海産物はゆたかだ。岩手の野菜も米も味の良い物がある。果物も多い。
  が、しかし、である。やっぱりもっとも特徴があって、知られている食べ物というと、岩手は「わんこ蕎麦」ということに落ち着いてしまうらしい。

 
 ある春に、岩手を訪れた、小団体旅行である。根っからの不精ものゆえに、どこを訪問するのかは聞いてもいない。岩の間から生えてきている石割桜の樹を見て驚いていると「着きました」という。
 蕎麦屋である。植え込みの竹の間を入ってゆくと奥行きのある座敷に通されて、すでにもう一同並んで座っている。
 出されてきたのはさっと湯を通しただけのそばである。それをひと口分だけ椀に盛る。口に入れると、椀が空くのでまた入れてくれる。座敷には数人に一人の割合で給仕担当の女性がついている。これは美人でないのがよい。蕎麦に集中できる。
 この給仕の技が素晴らしく、ついでくれる瞬間にその勢いでお腹がまた少しすいたような気分になってしまう。だから食べる。すると、間髪入れずに、お酌ではなく「蕎麦つぎの技」とでも言うのか,サッとまたついでくる。やってくるのは蕎麦ばかりである。
 これを続けると際限が無いし、そばの味ももうどうでもよくなってきて、どこでストップするかのみを考えるようになってくる。追い込まれるのである。通常の五割増しは食べてしまう。
 郷土料理というのか。むしろこれは郷土「芸」のような気がする。だって、蕎麦の味は、今も思い出せないのである。

 わんこ蕎麦はもともと南部地方の「蕎麦振る舞い」という風習がそのおこりともいわれるが、定かなことはわからない。
 また、岩手県生まれの宮沢賢治が農学校学校の教員時代によく通った蕎麦屋がある。そこで賢治が好んで食べたのは、天ぷらそばだそうだ。それもシャンペンサイダーを飲みながら食べ、その蕎麦屋の店主と語り合ったという。
脚本家  市川森一

 「私は生まれが諫早なもので、長崎県にはウルサイですよ。長崎県内のあちこちを舞台にした映画やテレビのシナリオも、ずいぶん書いてきました。
 今でも週に一回ぐらいのペースで長崎に帰っています。そんな時、普通に買って帰るお土産はカステラやからすみなんですが、自宅へというか、自分へのお土産は、長崎清水さんの『五味八珍』なんです。
  諫早市役所に勤めている友人に教えてもらって以来、大ファンになりました。地元ではかまぼこのことを“かんぼこ”というんですが、まさしく幼い頃に食べたあの“かんぼこ”そのままの懐かしい味がするんですね。昔、魚屋で売ってたかんぼこ。行商の魚売りのかんぼこ。昔から舌になじんだ味ですね。実は家内も大のファンで、家の冷蔵庫に『五味八珍』は欠かしたことがないんです。我が家の必需品といっていいかもしれません。」

市川 森一 (いちかわ・しんいち)
長崎県諫早市出身。日大芸術学部卒。映画「長崎ぶらぶら節」、大河ドラマ「黄金の日日」などを手がける。芸術選奨文部大臣賞、紫綬褒章などを受賞。日本放送作家協会理事長。
 
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