【食の庭】食道楽
2007.06.25
 
Vol.4微妙なザラザラ感が舌ざわりをよくするここしばらくは手打がリード「円龍のソバ行脚」について
 
三遊亭 圓龍
 
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 2005年に東京のソバ店の食べ歩き本を日貿出版社から出す事が出来ました。
 以前から知っていた店を含め、手打そば店を中心に約1000店を調べた中から旨い、安い、何か良い処がある店を300店選ばせて頂きました。 今でも大きな書店に置いて頂き感謝致しております。

 多くのソバ店はソバ、うどん、御飯ものなど数十品目取揃え、しかも出前迄します。この世界でもめずらしい極め細かいサービスは、我が国が水や食材が豊富で、長年に渡り築きあげた信頼感の成せる業だと思います。
  近頃ソバをメインとした、個人の和風総合レストランが、人手不足や出前専門店との競合で減少しているのは淋しい限りです。
 その反面駅や、スーパーや商店街の近くに増えて来たのが立ち喰いソバ店です。以前は既に茹でてあるソバを、数秒温めて出しましたが、今やその多くは生麺をその場で茹でて出しますので、いち段と旨くなりました。量は少なめですが、御飯とのセットが多く、どんな要求にもこたへてくれて便利です。
 更に進歩した製麺機を使う店があり、手打では難しい十割ソバを、五分で捏ね、十秒で茹で上ります。ソバは多少柔かいのですが、これ又けっこう旨くて早くて安直です。
 尚ダシの取り方ですが、多くの店で行っている様に鰹節など数種を混ぜ、数週間掛りで作り上げる手法に満足していますが、甘すぎる店が多く、いささか閉口しています。
 手打ソバ教室は相変らず多く、習う人も相変らず多い様で、定年退職した方、職を替えた方、何か趣味を持とうと云う方など人様々です。中には店を持つ方も居りますが、成功する確率は低い様です。
 当然の事ながら、他に収入の道があり、自宅で自分のペースで行えば失敗は少ないでしょう。しかし手打ソバ店は、私も廻り切れない程増えており楽しみは尽きません。
 私は根っからのソバ好きで、普段はそこそこ旨くて安くて量の有る店に行くのですが、何よりの楽しみとして良いソバ屋が出来たと知ると、新しい味を求めて捜します。
 良いソバは今後しばらくは手打がリードすることでしょう。手で加減を感じながらしっかり捏ね上げる事により、弾力性が加わります。
 この事は他の麺も、パンも、陶器造りも共通です。そして最後に包丁で切りますが、これはソバが鋭い刃で切られるのではなく、鈍器で押分けられるのです。
 これにより生ずる微妙なザラザラ感が、歯ざわり、舌ざわり、唇ざわりを良くしてくれるのです。

 

三遊亭 圓龍 (さんゆうてい・えんりゅう)
昭和14年、東京生まれ。都立紅葉川高校を卒業し、松井証券(株)に入社。8年勤務。昭和40年、三遊亭円生に入門。昭和56年、真打昇進。

 
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