【食の庭】食道楽
2009. 7. 22

Exploring Sake and Shochu Breweries

vol.1「小豆島」森国酒造

風土と米と水と心がコラボした島酒
香川県から人と資材をそっくり小豆島へ
日本酒のニューフェイス

金関 亜紀
 

 「島ならではの酒造りです」。蔵元の森國幸広さんの言葉どおり、毎年旨き酒を醸し出している森国酒造。温暖な瀬戸内海の島で育むその酒には、希望と愛情、そしてチャレンジという精神がこもっていた。


 

■135年も続いた酒蔵を廃業
 映画『二十四の瞳』の舞台になった瀬戸内海の小豆島に2005年、35年ぶりの日本酒の酒蔵が誕生した。
 森國酒造はもともと香川県にあった奥様の実家の135年も続いた酒蔵だった。
 しかし、「自分たちで新しい酒が造りたい」と伝統をそのまま受け継ぐのではなく「創業者」としてのスタートにふさわしい場所で、蔵を造りたいという心の赴くまま。香川県の酒蔵を廃業し、小豆島へ移動。そして森國酒造を創業した。もちろん、前蔵からの蔵人も若き蔵元の心粋にうたれ、ついてきてくれた。さらに資材や設備もそのまま再利用することで、初期投資をできるだけ少なくすることができたという。


2年前に日本酒業界に一石投じる新蔵、森國酒造が誕生。

 森國さんは、もとから酒造りに携わっていたわけではない。学校を卒業後、最初に就職した先がIT関連だった。なんと実家が江戸時代から続いた宮大工。
 ある意味異色の世界から酒世界へ飛び込んできたのである。「子供の頃からこれだ! というものを生み出したいと思っていました」という気持ちをもっていたという。そんな物づくりへのこだわりが、自らのブランドを起こすことを決意させたのだ。この森國さんと共に酒造りを担っているのが、今では数少ない伊方杜氏の流れを組む酒造り19年の花田公紀杜氏。
 気温や水温の微妙な変化を見逃すことなく、中四国を代表する酒蔵を目指しているそうだ。


森國さんの実家は江戸時代から続いた宮大工。その屋号を磯松。その名より『磯松』は誕生。フルーティで軽快な口当たり。他にも『森』や『ふわふわ』、『うとうと』などがある。

■仕込み水
 「土壌の良さが酒の味。だからこそ、この場所を選んだんです」というように、蔵がある土地は水質もよく、秋冬になると毎日、小豆島にそびえる星ヶ城の山頂の沢まで超軟水の仕込み水を汲みに行く。
 「この仕込み水は酒の命。つくりの要です」。この水が利用できることを知って麹米には山田錦を、掛け米には雄町を使用。蒸し米は全て自然放冷させ、天井を舟形に造った特注の麹室で製麹する。全て手作業だ。
 「うまい酒を生むためには目の届く範囲が一番。納得するまでです」。こうして生まれた『磯松 純米吟醸』。透明感たっぷりで爽やかな含み香りのある落ち着いた一本だ。
 『磯松 特別純米 無濾過生詰』は酸の厚みが強く、濃厚なパンチのあと全体を引き締める。


グイグイ飲めそうなほど舌の上で滑らかに流れる旨き酒は手間をかけて手作りによって生まれる。

■これが本物の酒
 「香りを秘めつつ、つるりとした口当たりで味がこっくりのった酒。これが讃岐、備中備後、灘とも違う小豆島の酒です」。
 『磯松』は完全手作りの少量生産。そのため販売の仕方も限定にした。「販売先も小豆島および全国のお酒を理解していただいている酒販店に限定しております」その理由は、流通過程での品質管理に気を配り、最良の状態でお客様の元へお届けするための配慮だそうだ。
 「出荷まで森國酒造で慎重に保管し、卸を通さず、弊社から直接販売店に出荷します」。このこだわりが味も品質も落とさず、『磯松』の価格破壊や価格高騰にならないようにした配慮だ。


一年中ほぼ温暖な気候な瀬戸内海のなかでも一番住みやすいといわれる小豆島。

■カフェバーを開店
 幾千もの情報量が飛び交う現代生活のなかで、こだわりをもち自分らしい酒を作るのは並大抵の努力ではできない。でもその努力をすればするほど、人の耳に情報は伝わっていく。
 そこで森國さんのアイデアで生まれたのが直営のカフェ&バー。島にあった佃煮工場を改造し、この空間で森國酒造のお酒を初め、小豆島の味を紹介したレクリエーションやイベントを定期的に開催しているそうだ。
 「カフェ&バーとして、お客様に利用していただくことで、小豆島を味わっていただける。さらに、森國酒造の酒の味も知ってもらえると思えるんです。
 雑誌やテレビで取材されるのもひとつの手段ですが、それは一過性のブームにしかならない。でもここにいらっしゃったお客様が美味しい! と感じていただき、それをお友達に伝える。そのお友達も訪ねてくださり、また別のお友達に伝える……というように、お客様自身が私達の情報を発信してくださると、それは活きた情報となります」。

 この試みは森國さんの読み通り、口コミで日本中の酒ファンはもちろん、島へ来る観光客の目玉となっている。自分らしい酒、島らしい酒、小豆島の酒としてさらなる飛躍をすべく、今年の秋もじっくり仕込みにはいるそうだ。
 「常に同じ品質、味のものを作り出すのが当たり前ですが、毎年違っていても、美味しい酒ができることが、一番だと私は思います」。
 そう語る森國さんの頭のなかにはどんなビジョンがあるのだろか。その世界を垣間見るためにも、やはり今年も森國酒造さんに通わねば、と思う。

お酒や島の素材を使ったカレーやスイーツ、利き酒セットや日本酒のカクテルを味わえるカフェ&バーは観光客はもちろん、島人の憩いの場所に。

撮影・金関亜紀 森国酒造

森国酒造
住所:香川県小豆郡小豆島町馬木甲1010-1
電話:0879-61-2077
営業:8時30分〜17時
URL :http://morikuni.jp/



金関 亜紀
(かねせき・あき)
 1974年、香川県生まれ。九州や山口で考古学に携わり、民俗学などに関心をもつ。東京の編集プロダクションや出版社勤務を経て、フリーランスに。現在、東京−香川を往復する生活を続ける。一年に地方や離島に出かける回数は30回以上。土地の食材や酒、祭りなどのフィールドワークを行っている。共著に「日本全国うまい焼酎虎の巻」(エイ文庫)がある。無類の酒好き。雑誌やネットなどでお酒のコラムをはじめ、離島の島ネタなどを執筆中。現在は各地の居酒屋で旬の食材と地酒を求めて放浪中。

 

 
 


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