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吉原 勇
劇的な大勝利で政権を握った民主党内閣は、マニフェストの早期実現を目指して一斉に動き始めた。来年の参院選までには一定の成果をあげないといけないから急ぐのは当然と言える。しかし反対の動きもある。性急にことを進めると将来禍根を残すことも考えられ、問題によっては慎重な姿勢が必要だ。
現在、焦点になっている群馬県の八ッ場(やんば)ダム事業中止問題もその一つである。同ダムは1949年ごろから基本構想が練られ、1952年に計画が発表されている。しかし反対運動が激しく、ようやく1990年代の後半から住民も軟化して工事が進み始めたところである。事業費4600億円のうち3000億円余がすでに使われている。
ところが新発足した鳩山由紀夫内閣の前原誠司国土交通相は就任後直ちに事業中止を表明、反発した地元住民との対話も開けない状況となった。やはり、中止を前提にするのではなく、ダムが本当に不必要なのか否か、根本的な問題から議論すべきではないだろうか。私は八ッ場ダムは作るべきだと思う。
首都圏の貯水はもともと少ない
東京には水は十分にあると思い込んでいる人が多いが実はそうではない。関東には八つのダムがあるが首都圏一人あたりのダム貯水量をみると30m3に過ぎない。世界の主要都市の一人あたり貯水量はボストン717m3、サンフランシスコ527m3、ソウル392m3、台北118m3などでほとんどが日本の首都圏の2倍以上である。
これまであまり問題なくやってこられたのは、下水処理をして繰り返し使うからである。京都大学環境衛生工学研究所のデータによると、大阪市民の飲む水道水は平均して他人の身体を6回通っている。東京の場合はもっと多くの人の身体を経由している。これは非常に危険な状態である。
オーストラリアでは一昨年、水不足で飲料水確保のため一度下水処理場を通った水を水道水にしようとしたところ世論が大反対、農業用水を飲料用に回してしのいだ。一度でも人の身体を経由するとその人の飲んだ薬が水道水に混ざるから使うべきではないとの考えからだった。
無視できない残留医薬品
事実、厚生労働省が2007年に発表したデータによると、東京、大阪の7箇所の浄水場の水を調べたところ抗生物質、X線造影剤、抗アレルギー剤、抗高脂血症剤、解熱鎮痛剤など25種類の医薬品が検出されている。その濃度は欧州連合が環境への影響評価を義務づけている10PPMをはるかに超えていた。これらの医薬品は下水処理場でも浄水場でも除去は難しい。
こうしたことを考えると東京の水道水については将来、いろいろと問題が出てくると想定しておかねばならない。最も望ましいのは新しいダムをいくつか作り、そこから東京の浄水場に直接水を送ることである。それは不可能ともいえるからせめて八ッ場ダムは建設し、残留医薬品の濃度薄めることぐらいはすべきである。ここまで工事が進んだものを中止するのは愚の骨頂である。 |